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『だって本当のことだから。きみに惚れたのは僕だし、惚れた弱みというか……瑞樹みたいに可愛くて良い子で、なのにしっかりしてて。そんな子が僕を好いてもメリットなんてないと思ってるからさ』
圭吾さん。
あなたは俺のことを買いかぶり過ぎです。いつも褒めてくれるけど、心の中はちっとも違うと知ったら幻滅します?
俺は末っ子だから。
人の顔色を見て行動するのも得意だし、駆け引きも得意なんですよ。圭吾さんが、そうであるように。
だから俺はあなたが、早く手を出してくれるように仕掛けてる。隙を窺ってる。
もう後戻りできないように、逃げ道を奪おうと必死なんです。
「じゃあ、惚れた弱みなら……俺の我儘、訊いてくれます?」
『んー? なんだろう。出来るだけ聴いてあげたいけど。どうしたの?』
夜は長くて、もうすっかり消えた熱を思い出させる。
髪を切る手の甲、毛先を持つ指先、鏡越しの真っ直ぐな瞳。
そして、熱くて火傷しそうなほどの唇。
考えるのはいつもあなたのことばかり。これが惚れていないというのなら、なんだっていうんですか。
どちらが先かなんて、関係ない。
好きであることに、軽重なんて必要ない。
「圭吾さんに……今すぐ会いたい」
だからそれを気づかせたくて。
俺はこうして、あなたを困らせる。
『っ、瑞樹くん……マジでそれは、言っちゃだめ』
「あはは、すみません」
土曜日は、晴れるといいな。
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