ある、晴れた放課後

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「おーっす……って、なんで怒ってんだよ」 昇降口に向かって歩く俺の横に、駆け寄ってきた直也(なおや)がピタリと並ぶ。その見慣れた横顔を一瞥して、窓越しの空を眺める。 嫌になるくらいの快晴だ。 「晴れてるから」 「なんだそりゃ」 「俺は、雨の方がいいの」 「瑞樹ってたまに意味不明なこと言うのな」 別に意味不明なんかじゃない。 明確な目的と理由があって、それが達成出来ない日のことを思い出すから悔しいだけ。 「今週の土曜日さ、松浦たちと映画行かん? 瑞樹も好きだろ、キリキリバサラシリーズ」 うっ。大好きなキリバサ。 でも土曜日はダメ。 「俺はパス」 「は? なんでっ?」 「んー、ちょっと用事」 「嘘だろ!? あんなに楽しみにしてたじゃんかよ!」 「うん、でもダメ。すごく大切な用事があるから……」 口にしただけで、顔が熱を持つのが分かる。 直也にバレないだろうか。 いや、バレたって構わない。どうせこの気持ちは、いずれ自分でも制御出来ないほど溢れて止められなくなるに決まってる。 「分かった!」 いきなり張り上げた直也の声に、身体が強張る。 「な、なに?」 窺うように直也の顔を見上げると、難しい顔でひとつ唸ってから、肩を思い切り掴まれた。 「さては瑞樹んとこのお店忙しそうだから、土日返上で手伝わされてんだろっ!」 「は?」 何をどう勘違いしたのか、直也が哀れみ混じりに俺の頭をがしがし撫でてくる。 幼馴染のくせに、鈍いというか、ズレてるというか。 「くぅ〜可哀想な奴っ! いくら人気のフラワーショップでも、俺たちの青春を邪魔するのはいただけないだろっ!」 「い、いや、違っ」 「俺がおばさんとおじさん説得して、土日はゆっくり遊べるように言っとくからな! 俺に任せろ!」 「ちょっ」
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