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「あのね。そんなんで怒るわけないでしょ。むしろ嬉しいよ、僕を意識してやったってことだよね?」
図星で、頷くしか出来ない。
「そういうところが好きなんだよ。瑞樹は照れ屋だけど、僕任せにしたりしない。自分からこうして僕の気持ちを試したり、確認しようと行動してくれる。そういうのは、一方通行じゃないって実感できるし、すごく嬉しいんだ」
「でも、さっき……」
肩を落とす俺の手を、圭吾さんがゆっくり持ち上げる。すっと引き寄せられた指先に、躊躇うことなく落とされた唇。
そう、まるで童話の王子がお姫様にするみたいに。
「な! ちょっ、それっ!」
ボッと顔に火がついたみたいに熱くなる。
「はは、かーわい」
「俺、女の子じゃないですって!」
「知ってるよ。でも、どうしてもしたかった。さっき僕が怒った理由はね、あの女の子に嫉妬したから。瑞樹の顔を赤くしていいのは、僕だけで十分」
「っ、だから、そういうこと言わないで下さい」
「んー、それは承服致しかねますねぇ」
「もおっ」
「ほら、行くよ〜」
そんなの。俺だってそうですよ。
俺以外にその目を向けられたら、たぶん、嫉妬で頭がおかしくなってしまうから。
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