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「オーディションの時はさ、自分の大切な人が知らない男たちの前に晒されるのかと思うと、イヤだなって思っちゃって」
「大切な人?晒される?」
「まっ、細かいことは気にしないで。とりあえず、飛行機見ながらデートもいいけど、さすがに、ちょっと寒いよね。バイクで来てるからさ、乗ってくよね?どっちにしろ、かなり寒いとは思うけど」
「バイクなんて、乗れるんようになったんだ」
「舞ちゃんの中の僕のイメージ、いい加減、アップデートして欲しいなぁ。今の僕は泣き虫でもないし、舞ちゃんが守らなきゃいけないと思うほどヤワでもない。立場的には逆転してると思うよ」
「なんかちょっと納得いかないかも」
理央は少しだけ微笑んで、私の手をとると、また自分のコートのポケットに入れる。横に並ぶと、当たり前だけど肩の位置が理央の方が高いのを再確認してしまう。
確かに私の中の理央の情報は、アップデートしなきゃいけないのかもしれないけど。泣き虫だったころの彼はとっても可愛かったのにな。
なんか残念な気もしてしまう。
「何?」
「昔は可愛かったのになって。。。。」
「あのね」
「こんな逞しくなっちゃって。。。。こんな子に育つとはね」
「舞ちゃんは僕の親戚かなんかのつもり?舞ちゃんに認めてもらえるように頑張って育ってはみたけど、気に入らないの?」
「親戚のお姉さんとしては、お年玉でもあげなきゃかなって」
「そんなこと言ってると、舞ちゃん自身をもらっちゃうよ」
理央の返しにフリーズしそうになってしまう私の方が、はるかに大人になり切れてないのかもしれないね。
ポケットの中で繋がれた手はさっきより強く握られた。
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