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また顔が赤くなって、視線を伏せる制服姿の舞ちゃんの手をとる。
指と指を交差させて、恋人つなぎ。
前みたいに手をすぐ引っ込めることは無くなっただけ進歩かな。
そんな様子の舞ちゃんがあまりに可愛くて、見ていられなくなって、視線を前に向ける。
でもまた気になって、視線を戻して、ちょっと横を見れば、うつむき加減な舞ちゃんの顔は耳まで真っ赤だ。
分かり易い。ホント、免疫ないんだな。
「そう言えば、保留になってた舞ちゃんからの返事、聞いてないな」
僕がそう言うと、繋いでいた手に力がこもる。
「世の中的にはまだ、受験シーズン終わってないし」
気持ちの立て直しにかかってるな。
はいはい、もう少し、待ってあげるけどね。
あんまりイジメると、口、きいてくれなくなりそうだから。
言葉少なになった舞ちゃんと二人並んで歩くのも悪くないね。
握りしめた手から感じる温かさ。
舞ちゃんの新しい住まいは、ちゃんとオートロック。
以前住んでいたところより、セキュリティーがしっかりしていて安心だ。
エントランス前に着くと舞ちゃんは鍵を取り出して、ロックを解除した。
「お休み。送ってくれてありがとう」
舞ちゃんがやっと目線を上げる。
「うん、お休み」
今日はここまでか。
ちょっと、というか、かなり残念な気もするけど。
しつこくすると嫌われちゃうしね。
引き際も大切だよね。
僕が片手を軽く上げると、舞ちゃんは建物の中に足を踏み出した。
もちろん、僕は舞ちゃんの姿が建物の中に見えなくなるまで見送ったけど。
踵を返して、駅の方に向かって歩き出す。
僕はスマホを取り出して、今日の写真を見直した。
ホントは舞ちゃんだけの写真を撮りたかったんだけど、頑なに拒否られたし。
まっ、トリミングしちゃえばいいだけだけど。
また帰ってから、ゆっくり今日の出来事を振り返っちゃおうかな。
舞ちゃんたち3人の制服姿。
あんな3人が学校のクラスにいたら、男子は大盛り上がりだろうな。
そんなことを考え始めて間もなくだったと思う。
後ろからフワリと抱きしめられた。
「理央?」
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