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あんまり彼ばっかり見ていたからか、ドレスのレースの裾を踏んづけそうになって二、三歩つまづいてしまった。
ママの前でクラスの好きな男子と出くわす状況なんて考えたことがなくて、心が浮き立つも動揺していたのだろう。でも、会館の通路で目が合って内浜やその友達も足を止めてしまった以上、はやる心を落ち着かせて、できるだけクラスメートっぽく声をかけるしかないと思った。
恥ずかしくって少し声が震えた。
「内浜。や、やっほう」
すると、
「どうも……お疲れ様です。」
と小学生らしくない礼儀正しい挨拶でぺこりと頭を下げたのだ。
しかも、リュックを降ろして。
あの、ふざけることが大好きな内浜に似つかわしくない行動と言葉に少々疑問を覚えた。でもそれ以上に、学校で見られない、妙によそよそしいその姿が、あのときの私には可愛くて仕方がなかったのだ。
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