秘密を破ると?

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秘密を破ると?

 開いた口が塞がらないとは、まさしくこの事だ。俺は何も理解出来ないでいる。 「心配することはない。メンバーの選抜は進んでいる。千佐もメンバーの1人だ」 「そーいうこと、よろしく」 「いやいやいやいや、おかしいでしょ!俺は普通の大学生だ。こんなファンタジーな話は」  俺は博士の言葉も、千佐の握手を求める手も受け入れられない。ごく普通に生きてきたのだから、これからもごく普通に生きていきたい。何を喜んで命をかけるようなことをしなくてはならないんだ。  パニックになっている俺の胸に、トンと拳を軽くあてる千佐。 「君には桃太郎がついている。大丈夫」  すとんと、千佐の言葉が俺の胸の中に落ちる。 「さっきの戦いで確信した。あなたがいるならば、私は、私たちは目標を達成出来る」 「目標?」 「もう誰にも鬼にさらわせないし、つれていかれた人も取り戻す」  力強い瞳で千佐は俺を見る。その目に俺は惹かれた。 「メンバーはこれからあなたと私で選ぶのよ。よろしくね」 「俺はやるなんて」 『オレの想いを果たしてくれ。皆が平和に暮らせる日々を取り戻してくれ』  頭の中に、あの声が、桃太郎の声が響く。切なく願う声。聞いてしまうと、後には引けなくなった。 「危なくなったら、逃げます。普通の大学生ですから」 「うん」  博士は満足そうに頷く。 「あと、保険とかめっちゃ良いやつにしてください」 「そこは大丈夫。給与もエリートサラリーマンの年収の3倍は用意させる」 「それは......まぁ、わかりました」  俺はため息を吐きながら、博士と千佐を見る。博士は俺の前に1枚の紙を出してきた。そこには誓約書と書かれていた。 「このことは勿論ご家族にも秘密。僕ら鬼退師戦隊に関係する人だけの秘密だ」 「破るとどうなりますか?」 「戸籍抹消で済むかな?」  笑顔で言ってのけた博士の言葉に俺は背中から冷たい何かが落ちるのを感じた。 「冗談だよー。とりあえず、よろしく」  冗談に聞こえないが、とりあえず冗談として受けとるしかなさそうだ。  こうして、俺は人には言えない秘密が出来てしまった。
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