変身するんだ!

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変身するんだ!

 目の前には俺にこの変な腕時計をつけた張本人がいた。白衣を見にまとい、嬉しそうな顔で俺を見ている。 「その時計は君を選んだんだ。もう諦めてなるしかないんだ」 「なんなんだよ、あんた、それはさっきも断るって.......」 「あんた、じゃない。僕のことは博士と呼んでもらおうか」 「いや、だから俺は」  再度はっきり断ろうとしたところで、女性の悲鳴が聞こえた。白衣を着ている男--博士は俺の腕をとり、悲鳴がした方へ駆け出した。俺は引きずられるままに、博士と女性のところに辿り着く。  そこには、俺がこれまで18年生きてきて見たことがない化け物が気を失っている女性を抱えて逃げようとしていた。  頭に角を二本生やし、顔は人の肌とは思えぬ赤色、着崩した着物。  --鬼、だ。  なんでこの令和の時代に鬼なんか。  俺の頭の中はその言葉だけだった。 「変身するんだ!」 「はい?!」  唐突に言われたことに頭が追い付かない。というか、追い付きたくもない。 「いいから、桃印のボタンを押して!」  その言葉ですぐ押すのはテレビのヒーローくらいだ。ちなみに、俺はヒーローじゃない。普通の大学生だ。 「鬼退師、チェンジ!」  その声は俺の頭上から降ってきた。俺が上を見ると、ピンク色の戦隊服を着た女子が舞い降りてきた。 「ピンク!天が授けしこの力で、いざ参ります!」  上手に着地を決めた女子は鬼に鋭い目線を投げながら、俺と博士をその小さな背中で庇う。 (なんか決め台詞言ってますけど、誰?!)  状況がつかめずにいた俺はたちまちパニックに陥る。ピンクと名乗った女子は腰に差していた刀を鞘から抜くと、鬼に向かって走り出した。 「彼女は鬼退師戦隊モモレンジャーの1人ピンク。最近出来た鬼の殲滅部隊設立当初から所属している古株の1人だ」 「言っている意味がわかりません」  真面目な顔で説明をしていた博士が目を丸くしてこちらを見た。 「君は何も知らなすぎる」
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