わかってくれる!

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わかってくれる!

 けらけらと笑いながら、ポニーテールで髪の毛を束ねている女子--ピンクが俺たちに歩きながら近寄ってきた。 「フッツーは信じないよ、それ。わかるのは鬼退師の家系だけ」 「いや、彼ならわかってくれる。だって、適合率100%だよ! 全くの普通の家の子孫でこれはない数値だ! 絶対仲間に入れるべきだよ、千佐(ちさ)!」  興奮冷めやらぬ口調の博士を適当にあしらいつつ、ピンクこと千佐は俺をじっくり観察する。既に戦闘状態は解除されており、千佐の服装はセーラー服に変わっていた。 「ま、とりあえず、ここにいてもアレだし。研究所に行こうか」  有無を言わさぬ強い意思が感じられる千佐の言葉に俺は頷くしか出来なかった。  都心から電車をいくつか乗り継ぎ、来たのは23区から外れ、東京の外れの場所だった。駅からはタクシーで15分と、駅からも離れている。 『国立科学文化研究所』  名前も立派だったが、建物も立派だった。国からの謎の予算を豊富にもらっているからか、敷地面積は東京ドーム何個分だとか、訓練場がいくつあるとか、教育と研究に最も予算がふられているからこれだけ建物があるとか、とにかく博士は国立科学文化研究所が現代の鬼退治をするのにどれだけふさわしく、またどれだけ今の日本が安全なのかを説明してくれた。  俺はとりあえず頷いて博士と千佐の後ろを歩いている。正門から歩いて10分の、やけに近代的なビルに入って行く。入り口には『適合性研究棟』と掲げられており、博士の専門研究ルームがあるようだ。  エレベーターで15階まで上がり、一番日当たりの良い部屋に通される。部屋には資料用の本棚、打ち合わせ用のテーブルとイス、博士のデスクだけと、思ったよりも殺風景だった。 「さて、適合者の君に協力をしてもらいたい」
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