2人が本棚に入れています
本棚に追加
/10ページ
これ持っていたら捕まりますよ
「協力、ですか?」
嫌な予感しかしない。こういう時は大抵悪い勘が当たるのは昔からそうだ。
向かい合っている博士と俺にお茶を出してくれたのは千佐だった。自分の分も準備を終えると、千佐は博士の隣に座った。
「今日はこの場所に鬼が出る可能性が非常に高い」
「何でそんなことがわかるんですか?」
天気予報でさえ、非常に高いとかは言わないはずだ。確率論であり、決定の話ではないからだ。
「君が生まれるずっと前からのデータの分析でね、簡単にわかるんだよ」
にやりと不敵に笑う博士。童顔っぽい顔つきなのに、不敵に笑うと恐さが出てくる。
博士は用意した地図を取り出し、俺に場所を説明する。
「2時間後、鬼が2体出現するはずだ。こいつらを殲滅してほしい」
「いや、俺は出来ませんよ」
「君なら出来る、問題ない」
俺の否定をあっさりと博士は否定した。隣に座っている千佐に目を向けても、そ知らぬ顔でお茶を飲んでいる。
「君にこれを渡そう」
渡されたのは鞘に入った日本刀のようなものだった。
「これ持ってたら捕まりますよ」
「問題ない。警察にはその腕輪をつけている人に対して、銃刀法は適用されないことになっている」
初めて聞く話に耳を疑ってしまう。この腕時計、というか鬼退師にどれだけの国家権力が行使されているのか、俺は恐くなった。
「変身の時は桃印のボタンを押して、「鬼退師、チェンジ!」と言えば、声紋コードで変身出来る。変身完了したら、コードカラーを名乗って、「天が授けしこの力で、いざ参ります!」と言えば、鬼退師の能力を使うことができるし、そのときに鞘から日本刀を抜くことが出来る」
「そんな子供の戦隊じゃないんだし」
「それははるか昔から僕らの仕事を知ってもらうために、テレビ局に協力してもらっていることだ。だから違和感なく皆協力して、鬼退治をしてくれている」
「はぁ......」
思わず気のない返事をしてしまい、博士と千佐に睨み付けられる。
「ともかく、今日は千佐のサポートをしてもらい、その体験で鬼退師として今後仕事をして行くか決めてもらうからね」
「はい?!」
またも寝耳に水の話に俺は驚きが隠せない。
「え、死んでしまったら」
「まあ、そういうこともある。でも安心して、最新鋭の技術で作った戦闘コスチュームは防御力も攻撃力も、映画のスーパーマン以上のパフォーマンスができる。簡単には死なない」
「博士、時間がないよ」
千佐は時計を確認して、博士に声をかける。博士は頷いて、俺と千佐に出現ポイントに行くように指示をする。
俺は何もわからぬまま、千佐と適合性研究棟から出る。入り口を出ると、ハイヤーが既に待機されていた。
「逃げるなら、ここだよ」
千佐がそう言った。
「鬼退師の家系でもないあなたが、変身して戦えると思えない。死にに行くようなものよ」
「それは、そうだな」
確かにそうであるが、俺の中の何かが戦場に行くように働きかけている。
この気持ちはなんだ?
最初のコメントを投稿しよう!