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どうする?
「どうする?」
最終確認かのように、真剣な顔で千佐は俺に訊く。
「行く」
思ってもいない言葉が口からスルリと出てきた。この時俺はなんでこう答えたか分からなかった。
千佐に続くようにして俺はハイヤーに乗り込んだ。
博士から伝えられた場所まで車で1時間のところだった。都心にやや近いが、まだ郊外と言える場所。住宅街が広がっており、平和な空気が漂っている。
本当にこんなところに鬼が出てくるんだろうか。
鬼の出現予定時刻まであと10分。
緊張感が高まってきたその時、後ろから大きな影が現れた。
「な、ななな」
振り替えるとそこには、高さ2メートルほどの鬼が2体いた。赤鬼と青鬼だ。
「なんでもう出てんの!!」
恐怖で足はすくんでしまい、動けない。そんな俺を置いて、千佐は鬼の前に躍り出た。
「鬼退師、チェンジ!」
千佐はそう言いながら、鬼に向かって突撃していった。赤鬼の攻撃を華麗なステップで躱しながら、桃印のボタンを押して変身する。
「ピンク!天が授けしこの力で、いざ参ります!」
言い終わるとすぐに、鞘から日本刀を抜き鬼と対峙する。鬼も鬼退師が来ていたことで、動揺を隠せないまま千佐と向き合っている。
「あなたはそこで見学でもしてて!」
確かに恐い。
いきなりこんな化け物と戦えとか言われてすぐに戦える方が不思議だ。
目の前では千佐が2体の鬼の攻撃をなんとか躱しながら、交戦している。余裕が無さそうな表情で刀を振るっている。
俺よりも背が低くて、細い女の子が、目の前で戦っている。
漫画の主人公ならば駆け出していって助けるんだろうけど、それは完全にチートキャラに違いない。
俺は強くもない。普通の大学生だ。
チートキャラなんかじゃない。
でも目の前で女の子が戦っているのに、引っ込んでいるのは男がすることじゃない。
俺は腕時計を見てから、桃印のボタンを押した。
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