数百年前

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 恩寵(おんちょう)について、男は生前、あらゆる文献を紐解いて調べていた。  それによれば、恩寵を与えられた人間は、何故かその運命を繰り返すのだという。  他人を助ける者もいるが、ほとんどは子のため孫のために命を捨てる。  恩寵を持つ者は、いずれ別の恩寵を持つ者と惹かれあう。  そうして恩寵は代々受け継がれていく。そういう血統だと言って良い。  (あやめ)もきっとそうした運命の輪廻上に己がいることを知っていたのではないか。  彼女は再び自分が恩寵を得ること、自分の恩寵を分けた男と再び巡り逢えるだろうことを、本能で知っていたのではないか。  男はそう考えた。  恩寵を持つ者を探していれば、いずれ彼女と巡り逢える。  
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