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再び赤面する詩は「そ、それは……私との子供が欲しいということでしょうか」と尋ねた。
バカだな。お前以外との子供なんかいるかよ。
「いつかな」
「そ、それはプロポーズですか!?」
「いや、違う」
がくっと項垂れる詩。このやり取り、先日したばっかじゃねぇか。自然と笑いが込み上げる。
すぐに結婚なんかしなくていい。
いくら弟から一人暮らしがしたいって言われたからって、こんなに短期間で結婚して河野の姓が抜けたら、お前の弟は本当に1人になんじゃねぇか。
多分そんなことまで考えてねぇんだろうな。まあ、詩が結婚したいって言うなら……別に、考えてもいいけど。
岩崎詩か……悪くねぇな。いや、むしろ河野よりもしっくりくんじゃねぇか。どうせ同棲するにあたって挨拶しにいくわけだし視野に入れておいてもいいか。
「昴は子供何人欲しい……?」
俺の服の袖を掴んで上目遣いでこちらを見る。もうそんな話……? 可愛いな、そんで。子供? 俺と、詩の? 何人って……。
「いっぱい」
「いっぱい!?」
「兄弟多い方がいいだろ? 俺、兄弟ほしかったもん」
「いるじゃん。保お兄ちゃん」
「俺の方が上なんだよ!」
何度も、何度も! どいつもこいつも! 詩は両手で鼻と口を押さえて笑いを堪えている。
「あー、おかしい。仲良くていいなぁ」
「仲良いもなにも……」
「兄弟仲が良いといいよね。協力し合ったり、励まし合ったり」
「ほら、多い方がいいだろ」
「多い方がいいかどうかはわかんないけど、いっぱい産むなら昴にも手伝ってもらわなきゃだよ」
ふふっと詩が笑う。手伝うか……父さんは俺1人でもそれができなかったんだもんな。俺は……父さんができなかったことしてぇな……。
「そしたら患者ほっぽり投げて帰ってくるわ」
「それは困る」
詩がゲラゲラ笑うから、俺もつられて一緒になって笑った。
この家に来て、こんなに笑えるなんてな……。
「ありがとな……」
一頻り笑ったら、詩がいつも以上に愛しく見えた。顎を指先で持ち上げて、キスをした。
ありがとう、俺のことを好きになってくれて。ありがとう、俺のことを受け入れてくれて。
詩のことは俺が守るから。私が昴を守ってあげるなんてもう言わせなくてもすむように。
俺とお前との間に子供ができても、全員まとめて守るから。
「私も……ありがとう。産まれてきてくれて」
俺よりも壮大なこと言うんじゃねぇよ。
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