白い花が香る家

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 腰椎麻酔で昴がちゃちゃっとオペを終えた。2日後には退院でき、すぐに仕事復帰をした響。オペ後の診察までしっかりやってくれた昴に感激したのか、今ではすっかり昴になついてしまっている。  あんなにりっちゃん、りっちゃんだったのに、医療の話をすれば全て答えてくれる昴を尊敬の眼差しで見る。そもそも医者のことは尊敬するって言ってたし。  薬品に関しては医師よりも知識を持っている薬剤師。新しく治療を開始する際、飲み合わせについて医師が薬剤師に相談する場面はよくある。  でもさすがは昴。その辺の薬剤師よりも薬学にも詳しい。実際患者さんにも投与しているから、色んなケースを知っている。  現場でも聞けないような昴との会話が楽しいのか、アパートに昴を連れていくとすっかり取られてしまっていた。  そんな響も今は一人暮らしを始め、自炊をしながら仕事に行っている。  一連の出来事をりっちゃんに報告すれば、おかしそうに笑っていた。  りっちゃんに昴のことを話すのも、響に会わせるのも抵抗がなくなってきた。でも昴はまだりっちゃんのことが苦手みたいだ。 「保んちおばさんもまた詩に会いたいって電話よこしたぞ」  昴はふと思い出したかのようにそう言った。一体いつの話だろうか。  武内先生のご実家に行く前に守屋家挨拶を済ませたいと先生が言ったから、その次の週に武内先生のお父さんとお母さんに会いに行った。 「なになに、昴ちゃん! かぁわいい子連れてきちゃって! 和泉ちゃんとは全然タイプが違うね」  まじまじと顔を見られてあわあわと戸惑う私。さすが武内先生のご両親! 美男美女でした! お母さんの方はかなりの美人さん。肩下まである髪を緩く止めて、目鼻立ちがはっきりとしたちょっと色黒。  子育ても終わって、趣味でテニスをしているそうだ。冬だというのに毎日のように通っていると言っていた。こんな時期に日焼けしている人はそういない、と思いながらも健康的に引き締まった体には脱帽する。  お父さんの方は、ワイルドな見た目の昴のお父さんともタイプが違った。爽やかで目もとが優しくて、しゃべり方は武内先生にそっくりだった。 「俺が和泉みたいなタイプを連れてくるわけないだろ」 「ほんとね。麻里惠ちゃんみたいな子を連れてくるんだからやっぱり血は争えないね」  からっとした気持ちの言い笑い方をする人。麻里惠ちゃんとは昴のお母さんのこと。お父さん同士仲が良かったから、子供ができる前から4人でよく遊んでいたそうだ。
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