白い花が香る家

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 昴と武内先生ができたのが、4人で行ったグアム旅行での夜らしい。2人の誕生日が近いのはそのせいだという。 「ようやく専門医になって、珍しくお休みもらってね。俊ちゃんとの旅行なんて学生時代以来だから燃え上がっちゃったのよ」  未だに旦那さんのことを俊ちゃんと呼ぶほどの仲睦まじさ。やっぱりある程度離れて暮らしている方が喧嘩もなく、良好な関係が築けるのだろうか。 「またその話かよ」  向かいの席で昴が呆れたような顔をする。 「あんたね、あの旅行がなかったら昴も保もいなかったんだからね。あんた達はグアム産」 「違うだろ。飲み過ぎだ」  お酒をたくさん飲んで楽しそうな理沙子さん。私まで昴と同じようにおじさん、おばさんと呼ぶわけにもいかないので、俊輔(しゅんすけ)さん、理沙子(りさこ)さんと名前で呼ばせてもらうことにした。  昴は大きなため息をつきながら、理沙子さんが抱えていたワインボトルを取り上げた。  昴がちゃん付けされているのも可愛いし、おとなしく頭を撫でられているのも可愛い。本当の親子みたいで、昴はここでたくさん愛情をもらったんだなと心が温まった。 「こんな日くらいいいじゃん。昴からは浮いた話もないから、まさか女の子に興味がないんじゃないかって俺達も心配だったんだからさ」  俊輔さんがそんなことを言うから、私も昴もひくっと顔をひきつらせた。まさか昴が散々色んな女の子を抱いていたとはとても言えない。これは昴と一緒に墓場まで持っていこうと決めた。 「昴が彼女を連れてくるなんて詩ちゃんが初めてなんだから。よっぽど好きなのね」  ふふっと理沙子さんが嬉しそうに笑う。ちらっと昴を見れば、咳払いをして照れるから、こっちまで恥ずかしくなってしまった。 「あらあら。同棲始めるなら結婚もいつでもいいわね。さっさと結婚しちゃえばいいのに」 「え!?」  私と昴はビクリと肩を震わせた。散々プロポーズとも取れる言葉をもらって、毎回違うと否定されている。  とはいえ、私と昴はまだ付き合って2ヶ月ほどだった。いくらずっと一緒にいたいと思ったからと言ってまだ結婚は早い気がする、と現実的に考えてしまう。  そりゃいつか昴と結婚したいとは思ってるけど。 「それは2人で決めるからいいんだよ。とりあえず今日は正月も来れなかったし、顔見せにきただけだから」  目を泳がせながらモゴモゴと昴が言うから、皆で笑ってしまった。
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