白い花が香る家

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「詩ちゃんは彼氏いるの?」  話題は恋バナへ。私の隣にいるかなと、正面の叶衣さん。その右隣にいるまどかさん。ダイニングテーブルを占領して全員で身を乗り出す。  普段無愛想なかなだって、古河先生のことが大好きなわけで、恋バナに興味がないわけがない。 「いますよ。今、一緒に住んでるんです」 「え!? じゃあじゃあもう結婚!?」  ぱあっと表情を明るくさせる叶衣さん。 「ま、まだまだですよ! 私達付き合って半年ですもん。2ヶ月前に同棲始めたばっかですし」 「関係ない、関係ない! 私も早いなぁって思ってたけど、結婚するまでにけっこうかかるよ。奏ちゃんに反対されたりとか」  まどかさんが目を細めて言う。 「あ、あれは! あっくんに近付いてくる女はろくなのいなかったからなの! 先にまどかちゃん知ってたら反対なんかしなかったし!」  奏が慌てて腰を浮かせた。ああ、そうそう。あっくんにまた変な女が近付いてきたってぶそぶそ言ってたよね。 「ふふ、冗談だよ。でも実際私も挨拶行ったの付き合って4ヶ月目くらいだよ」 「え!? 早い!」 「私なんて1週間でうちの実家来ついでに結婚仄めかしてったよ」 「い、1週間!?」  顎が外れそうになる。思わず両手をテーブルに置いて、身を乗り出した。  叶衣さんはクスクス笑って「うちらは友達期間が2年半くらいあったから。人となりは知ってたし、向こうが結婚する気満々だったからね」と言った。  まどかさんも叶衣さんも、旦那さんの方から猛烈なプロポーズを受け、結婚に至ったという。  いいな、いいなぁ……。私なんて未だプロポーズと勘違いしてその都度聞いちゃうのに。なんか、お決まりのネタみたいになっちゃってるし。 「詩ちゃんは結婚したくないの?」  まどかさんが甘い甘いコーヒーに口を付けて言う。 「……したいです。しなくてもいいかなぁって思ってたけど、まどかさんと叶衣さんみてたらしたいです! だって夫婦なのにラブラブなんだもん!」  パタパタと手をテーブルに叩きつけて、ぐでっとそこに頬をくっつける私。 「まだラブラブだよ。私、結婚式挙げたの今月だもん」  マグカップを持って嬉しそうな叶衣さん。幸せオーラ全快。ルイボスティーを1口飲んで「すごいのはまどかさんだよね。結婚して2年も経って子供もいるのに溺愛されて」と続けた。 「叶衣ちゃんだって半年後には赤ちゃん生まれるんだから、同じようなもんじゃない。あの律くんが友達に認めたくらいの人でしょ? それなら大丈夫だよ。人を見る目は確かだからさ」  なんの心配もない、そんなふうにまどかさんは言う。
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