白い花が香る家

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 まどかさんに言われたら説得力がある。だって現に子供ごとあっくんからこんなに愛されてるんだから。  そう思ってたのに、叶衣さんは険しい顔をする。 「それが、私の元カレもりっちゃんの親友だったんですよ」 「えぇ!?」  私とまどかさんは再び身を乗り出して、声を張った。かなは知っていたのか、平然とした面持ちで目の前のクッキーに手を伸ばす。  モデルのくせに全く食事制限はしない。その分、相当運動をしているらしいからこの体型をキープできるんだろう。 「じゃ、じゃあ旦那さんと元カレって……」 「親友同士」 「きゃーー! 昼ドラ!」  不謹慎ながらも私とまどかさんはきゃっきゃと盛り上がる。  浮気をされて、しかも相手は自分の親友で旦那さんの妹というドロドロな展開。それを救ってくれた旦那さん。  きゃぁきゃぁ言いながら、璃空さんの愛が大き過ぎて聞いてるこっちが恥ずかしくなるくらいだった。 「まどかさんちはどうやって知り合ったんですか?」  もうすっかり馴れ初めに夢中。 「うちも最初は浮気を疑ってたの。叶衣ちゃんちみたいにそろそろ結婚を考えようって時だったな。私、もう30過ぎてて焦ってたからさ」 「わかります! 私も30の壁は大きいと思ってた!」  まどかさんの言葉に共感する叶衣さん。まだ25歳の私とかなはやっぱり聳え立つ30の壁は大きく見えるのね、と眉をひそめた。  たまたま映画館で知り合ったあっくん。偶然にも何度も街中で出会い、ストーカーと化した元カレから守ってくれたそうだ。  まどかさんの方も大好きになって、もうあっくんと結婚する! そう決めた時に、あっくんとの出会いは全てりっちゃんに仕組まれたものだったと知ったそうだ。 「なにそれ! りっちゃん! やるー」  ふうっと肩を上げ、ちらっとリビングの方に目をやる。なんだかんだ盛り上がっている男性陣の姿が見えた。 「ねー。まんまとハマっちゃったよ。でもそのおかげであまねくんとも会えて、今幸せだけどね」  ふふっと笑うまどかさんは、本当に美しくて愛情が目で見えるようだった。 「奏ちゃんの彼も素敵な人なんだよ」 「あ! 知ってますよ。私、同じ病院で働いてるんで」 「ちょ、詩!?」  今度は古河先生とかなの話題。お忍びで東京まで通ってくれる古河先生の愛を知って、うっとりする私達。 「詩ちゃんも、かなちゃんの彼と仲良しなの?」 「仲良しというか、かなから紹介されて話すようになったんですけど、実は私の彼が先生と同期なんですよ」 「なにそれ! そんなことあるー!? もうドラマじゃん!」  最悪な昴との出会いから、優しさを知って惹かれていく過程を話せば、顔を覆いながら楽しそうに聞いてくれる。
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