白い花が香る家

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 インターフォンが鳴ると、階段をパタパタ降りてきたおばさんが「はいはーい」と可愛い声をあげながら玄関のドアを開ける音がした。 「わぁ、皆で来てくれたのね! いらっしゃい!」  ……皆? おばさんの声だけしかしないものだから、状況が読めなくてそっと首を傾げる。  直ぐに開いたリビングのドア。 「こんにちはー」  元気な元気な声が聞こえて、1番最初に顔を出したのは武内先生。今日はお休みだからか伊達眼鏡はしていなかった。と、その隣からひょこっと顔を出した美人。  誰!? 「た、武内先生!」 「あー、詩ちゃん。来ちゃった」  にっこり微笑まれた。 「あの子、詩ちゃん!?」 「そう」 「昴の可愛い子!」 「そう」 「詩ちゃん!」  なんだ、なんだ!? とんでもない笑顔で名前を呼ばれてるぞ。詩ちゃんって私だよね!?  前髪を長く伸ばしたワンレンの黒髪。それから少し焼けた肌。アーモンドアイの瞳が私を捕らえた。  あれ……なんか、雰囲気が理沙子さんに似てる……? 「詩ちゃんに会いたくてきちゃった。保の妻の和泉でーす」  明るく、おちゃめに敬礼された。 「わぁ! 和泉さん!」  こちらもぱぁっと表情を明るくさせる。昴が会わせてくれなかった和泉さんだ。こんなに美人さんだったなんて、やっぱり武内先生が選ぶ人は違うなぁ。  ぎゅっと引き締まったウエストに、しっかり筋肉がついた腕。細いんだけど、かなみたいにスラァっとした感じとはまた違う。なんというか、アスリート系?  まじまじとその美しい姿を見てるところに「おい、おとなしくしてろっつっただろうが!」と昴の声が聞こえる。 「あ、詩ちゃん。旦那が来たよ」 「だ、旦那じゃありません!」  かあっと顔が熱くなる。自分達が結婚したからって、そんなふうにひやかして。なんて思いながらも昴の顔を見れば、キュンっと胸が高鳴った。  朝お見送りしたばっかりなんだけどな。忙しくて家にいない時間の方が多いから、久しぶりに会った気持ちになる。  昴の元に駆けつけると、そっと手を引かれ「余計なこと言うなよ」と武内先生と和泉さんを睨み付けた。 「やだ。まだ挨拶しただけなのに。日頃の行いが悪いから、言われて困るようなやましいことがあるんでしょ」  腕を組んだ和泉さんがふんっと鼻を鳴らした。 「ね、ねぇよ!」  狼狽する昴。なんていうか……武内先生と似てる? 昴がこんなにたじたじになることなんてそうはないのに。 「こんにちは~」  ゆたぁとした穏やかな声が聞こえて振り返ると、そこには古河先生。 「あ、古河先生こんにちは。今日、すみませんでした。かなが恥ずかしがってわざと誘わなかったみたいで」 「余計なことは言わなくていいのぉ!」  口を開いたら私に素早く駆け付けたかなが私の口を大きな手で塞いだ。 「んー、んー!」  昴に腕を持たれたまま、かなには後ろから口を塞がれ、まるで誘拐される直前のようだ。
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