白い花が香る家

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 古河先生は顔を綻ばせて「妃茉莉ちゃん、久しぶりだね」と話しかけた。  まどかさんに抱っこされたままの妃茉莉ちゃんはきゃっきゃと笑いながら手を叩いている。  可愛い……。古河先生は何度も会ってるのか、妃茉莉ちゃんも怖がることなく笑顔だ。いや、あの柔らかい雰囲気のせいかもしれない。  不意に手を伸ばした妃茉莉ちゃんが、古河先生の眼鏡を捕らえた。  おぉっ!? 妃茉莉ちゃん、ナイス! 「わぁ、ひまちゃんダメよ! 大事なのだから朋樹くんに返そうね」  まどかさんが体を揺らしながら眼鏡を返そうとする。  でも私の視線は古河先生に釘付けだ。  ……誰? 思わず声に出してしまいそうだった。眼鏡をかけている時の倍くらい目が大きい。レンズが厚すぎて目が小さく見えてただけか!?  キラキラと光を放つような、アイドル顔。どちらかというと昴のような可愛い……受け顔。うん、受け決定。  っは!? こ、これは……。  弁護士×医者のBL構図が脳内を占領した。  ばっと璃空さんに視線を移す。 『ちゃんと眼鏡しときなよ。その可愛い顔、誰にも見せたくない。他の男に触らせたらお仕置きだから』  そんな声が聞こえた気がした。  更にばばっと古河先生に目を向ける。 『ちゃんとしてるよ、毎日……。外すのは璃空の前だけ……』  そんな声が聞こえた気がした。  ぬああぁぁぁぁ!! たまらん! これは、たまらん!  カプ完成! 弁護士と医者のカップリングって……医者×医者よりもいやらしくて濃密な感じが……。  ああ、鼻血出そう。叶衣さん、ありがとう。古河先生が隠れ美形だと教えてくれてありがとう。私はなにも知らないまま、もったいないことをするところでした。  まさか私の腐女子レーダーが反応しなかったなんて……原石は察知できないのね。  もっと見る目を養わなければ。私は新たなストーリーを描きながら、他の皆とは違った目線でそのほっこりする光景を見つめた。 「皆さん、お昼食べられました? 私達、もう皆すませちゃったんですけど」  気の利くまどかさんが新メンバー達に声をかける。 「いや、それがまだ……」  武内先生が和泉さんと顔を見合わせて言う。 「残り物でよければ食べていって下さい」 「いいんですか!?」 「はい。張り切って義母(はは)と作っちゃったのでたくさん余ってるんです。まだ余るようでしたら、皆で持って帰ってもらえると助かります」 「わぁ、嬉しい! 私達、お互い忙しくてご飯作る暇もないんでありがたいです!」  本当に嬉しそうな和泉さん。私も助かるーなんて思っていると、隣でうんうんと頷く叶衣さん。 ーーーーーー  スター特典【本当の兄ちゃんができそうです】は、スター20個から閲覧可能です。  響目線のお話です。りっちゃんとのやりとり、オペをした時の短編が書かれています。
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