白い花が香る家

23/69
前へ
/466ページ
次へ
 私は千愛希さんに電話をかけた。前にバッタリ会った時に連絡先を聞いたのだ。もちろん、昴と仲直りした後は事情を説明した。 「もしもーし、詩ちゃん?」  明るい声が聞こえる。自然と心が弾み、こちらも頬が緩む。りっちゃんには言わずに電話かけちゃったけどまあいいよね。  言えばきっと呼ばなくていいよ、とか言うし。 「こんにちは! 千愛希さん今忙しいですか?」 「うーん、暇ではないかな。新しい恋愛シミュレーションゲームを考案しようと思ってるんだけど、中々キャラが確定しなくてさ。行き詰まってたところ」 「お休みの日までお仕事ですか」  どっかの誰かさんみたいね。 「まあ、私は常に社長にくっついてるから休みなんてあってないようなもんなのよ。暇さえあれば新しいゲーム考えないと時代に取り残されちゃう」 「そっか……。でも、よかったらこっち来ません? 強烈なキャラクターが揃ってますよ」  私がそう言えば、隣でまどかさんがクスクス笑う。 「強烈なキャラクター? なんか今日律っちで集まりがあるんでしょ?」 「あ、りっちゃんから聞きました?」 「うん。夜、律と会うつもりだったんだ」  なんだ、りっちゃんそんなこと一言もいわなかったじゃん。 「どうするって聞いてくれたんだけど、なんとか今日中にアイディア出したくて昼間はお断りしたんだよね。でも、結局なんも思い付かないからこれなら行けばよかったかな」 「じゃあ、是非! ご飯もたくさん余ってて、お裾分けしたいんですけど、ご実家にどうかなって」 「あ、本当? それは助かるわ。ご飯作るのも楽じゃないってお母さんもおばあちゃんもひいひい言ってたから」  そりゃそうだろう。毎日10人分のご飯を作るとなれば、合宿並み。 「じゃあ、来てくれます?」 「うん。わかった。その強烈なキャラクターとやらを拝見させてもらおうかな」  私は頷いて電話を切った。ちらっとまどかさんに視線を移し、「来てくれるそうです」と言った。  一緒になってりっちゃんを見れば、なにやら璃空さんと話している。2人とも真面目な顔なんかしちゃってクスリとも笑わない。  難しい話をしてるのかな、なんて思いながら千愛希さんがやってくるのを待った。  新メンバーが食事を楽しみ、既に食事を終えたメンバーは其々飲み物を持ってあちこちに移動する。リビングもダイニングも広いから、これだけの大人が集まっても余裕がある。  お家に呼ぶにはどんな準備が必要かまどかさんに聞いておこうっと。
/466ページ

最初のコメントを投稿しよう!

12382人が本棚に入れています
本棚に追加