白い花が香る家

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 千愛希さんは30分後くらいにやってきた。急に来た千愛希さんにりっちゃんは驚愕し、指を差された私はまどかさんの後ろにさっと隠れた。 「詩、呼んだなら教えてくれたらいいのに」  りっちゃんは珍しく口を尖らせていた。 「あぁ! まどかさん、まどかさん! 今日もとても麗しい! なんて素敵なの!? なんていい香りがするのかしら! この香りに包まれて死にたい」  ……え?  激しい声が聞こえた。千愛希さんは変わった人だとは思っていた。あっくんからも色々聞いて覚悟はしていた。  彼女は熱烈なまどかファンだから。 「千愛希ちゃん、落ち着こうね」 「これが落ち着いていられますか! 奏ちゃんと律のお友達が集まるだけだと聞いていたものですから、まさかまどかさんまでいるとは存じ上げず! 知っていたら、なにもかも放り出して飛んできたのに! どうしてあなたは肝心なことをなにも教えてくれないの!」  あ、標的がりっちゃんに変わった。 「うるさいな……。そうなるからでしょ」  心底嫌そうな顔をしている。こんな顔するくせに、千愛希さんを選んだんだよなぁ。お互い自由で心地良いって言ってたから、私達みたいな恋愛とはちょっと違うんだろうけど、2人にしかわからない世界があるんだろうな。  千愛希さんはまどかさんに憧れているだけあって、並んでいると雰囲気が似ている。でも、黒髪の前髪パッツンにしたことで千愛希さんらしさが出ていて、私は前よりも今の方が好きだ。 「あの人、律さんの彼女?」  後ろからふと現れた昴にびくりと肩を震わせる私。 「そうそう、すんごい美人でしょ?」 「まあ……でも、あれはあれで強烈そうだな」  顔をひきつらせている昴。うん、確かに強烈なキャラクターが揃ってますよとは言ったものの、あの人も十分個性的だったことを忘れていた。  千愛希さんの姿を見つけてあっくんも嬉しそうに駆け寄ってきた。  そのせいで、綺麗にカップリングで別れる。と、自然にあぶれてしまう響。 「響も彼女連れてくればよかったのに」  1人じゃ寂しかろう。そういった配慮を込めて言ったのに、響は苦虫を噛み潰したような顔をする。 「絶対、いや。彼女、おとなしい子なんだよ。こんなところに連れてきたら失神しちゃう」  我が弟ながらなんて失礼な男だ。和泉さんに叶衣さん、それから千愛希さん。主に女性陣は遠慮を知らないような人達。  さすがに社会人1年目にはハードか。高度な回避力が求められてくるであろうから。
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