白い花が香る家

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 千愛希さんはモグモグ口を動かしながら数度頷く。 「今日はネタ探しに来たのよ。ほら、昼間は新しいゲームのキャラ設定を考えなきゃって言ったでしょ」 「まだできないんだ」 「そう簡単にはいかないのよ。乙ゲーなんて今時いくらでもあるんだから。やっぱり課金したくなるくらい面白いものじゃないと中々ね」 「え? え? じゃあ、りっちゃんとか昴がゲームになるんですか?」 「そう。どう?」 「乙女ゲームってことは、選択によってルート変更できたり、エンドが変わるっていうあれですよね?」 「そうそう」  な、なんと! それは……萌える。これだけの美形の中から好きなイケメンを選べるのか……。そんな美味しい話があるだろうか。 「おい、なんでお前が嬉しそうなんだよ」  面白くなさそうな顔をする昴。そりゃそうか。私がりっちゃんやあっくんを選ぶ可能性もゼロじゃないもんね。 「ゲームができたら私はもちろん昴を選ぶよ!」 「いや、ゲーム必要ねぇじゃん」  元も子もないことを言われ、頬を膨らめる私。  そんな私も新作BLを書こうとしている身だから、千愛希さんのことはつい応援してしまう。 「ちょっとこの辺りのキャラでイラストレーターの子と相談してみるわ」 「楽しみです!」  千愛希さんと盛り上がっていると、「楽しい話?」と和泉さん登場。 「ゲームの話をしてました。この千愛希さんは、アプリゲームを作る天才なんですよ!」  なんだか自分のことのように誇らしくなってしまう。  医者の和泉さんと、アプリケーションエンジニアの千愛希さん。2人とも偉大なお仕事だけど、こんなことでもなければ出会うことはなかっただろう。  人の縁とはどこに転がってるかわからない。  忙しい武内夫妻は、お互いに入院患者の様子を見に行くと言うので、乗り合わせで来た昴が送っていくことになった。昴もそのまま病院に寄って処方依頼や退院検討の確認に行くそうだ。  古河先生はかなが送っていくことになり、私も自分の車で来たので、まだ少しゆっくりさせてもらうことにした。  叶衣さんの結婚式の写真を見せてもらったり、寡黙な印象の璃空さんが家ではデレデレなことを教えてくれた。  これでまた、璃空さんの情報が増えた。古河先生とはどんな設定にしようか。いや、その前にハルマオを完成させなければと思いながら、私はその日を大いに楽しんだのだった。 
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