白い花が香る家

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 ずいっと顔を寄せられ、にっこり微笑まれる。 「俺も連れてって」 「はぁ!? おま、関係ねぇだろ」 「朋樹が関係あるのに俺には関係ないってどういうこと? 関係あるでしょ」  保は深く座席に腰かけて、シートベルトを締めた。 「おい」 「出発!」 「話を聞け!」 「聞いてるじゃん。どこ行くのって。まさか……詩ちゃん裏切ってやましいことでもしようなんて考えてるじゃ……」  うわー、さいてーなんて声まで聞こえる。コイツ……。 「その詩に会いに行くんだよ」 「じゃあなんで朋樹も行くわけ?」 「朋樹の彼女もいるからな」 「え!? 守屋奏!?」  保がぐっと勢いよく体を前に出すから、シートベルトがガッと鈍い音を立てて止まった。  朋樹は驚いたように振り返り「なんで奏ちゃんのこと知ってんの!? 詩ちゃんから聞いたの?」と声を上げた。  有名人らしい彼女との交際は誰にも言わず、秘密にしてるんだろう。詩と付き合ってる俺は別として、保は詩とのことに協力してくれたものの、朋樹とその彼女に関しては別件だ。 「ううん、律さんが奏のことは朋樹に任せてるって言ってたから。しかも、この前たまたまテレビ見てたら、守屋奏っていう律さんそっくりな子が出ててさ。すぐにピンッときちゃった」  嬉しそうな保に俺と朋樹は苦笑する。コイツには本当隠し事はできねぇな。直感だけは冴えてやがる。 「律さんの友達を含めたパーティーをやってんだよ。俺は行かない予定だったけど、仕事が一段落ついたから行くことにした。朋樹は誘われてないって言ってたから、一緒に連れてこうと思ってな」  俺は渋々説明をした。後で詩にぐずぐず言われても嫌だし。コイツなら言いかねないし。 「なになに、それ楽しそう! やっぱり俺も行く」 「来んなよ。お前みたいにうるさいヤツが行くところじゃないんだって」 「待って待って、パーティーなんて俺みたいな盛り上げ役が必要でしょ? きみ達、全然しゃべらない人なんだから」 「お前が喋りすぎなんだよ。そもそもお前は呼ばれてねぇだろ」 「朋樹だって呼ばれてないのに行くんでしょ?」  保の言葉にぎょっとする。せっかく宥めたのに、傷口に塩を塗るようなことをするな!  そろっと朋樹に目を移せばまた泣きそうな顔をしていた。 「よ、余計なこと言うなよ! 向こうに彼女がいるんだからいいだろ!」 「じゃあ俺も和泉連れてこ」 「はぁ!?」 「律さんだって友達呼んでるんでしょ? 昴と朋樹が友達呼んじゃいけないなんてルールあんの?」 「ルールって……」 「……あ、もしもし? 和泉?」  俺に対しての返事ではなく、勝手にスマホを耳にあて、話し始めた保。
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