白い花が香る家

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 ほんっとにマイペースだよな。全く遠慮がねぇ。しかも和泉って……詩には会わせたくなかったのに。  俺はブレーキを踏みっぱなしにしたまま、ハンドルに額を預けた。 「おっけ。そのまま市立病院向かって。迎えに行くから」 「おい、アイツも院内にいるなら忙しいんだろ?」 「まあまあ、ちょっとくらい抜けたって大丈夫だよ。俺だって昼飯貰ったら帰るからさ」  もう既に昼飯貰うつもりでいるし。図々しいったらない。よく他人の家でやるホームパーティーに積極的に参加する気になるよ。  ぜってぇおばさんの血筋だわ、これ。  俺は大きくため息をつき、なにがなんでもついてくるつもりの保とその嫁を乗せて守屋家に向かった。  どうせ俺が送っていかなくたって、こんだけ好奇心に満ちた顔をした保は自分で俺の後をついてくるだろうから。そういう男だ。 「昴、久しぶりじゃん! こちらが朋樹くん? こんにちはー、保の妻です」  後部座席に乗り込むや否や、朋樹の顔を覗き込んでいつもよりも高い声でそう言った。おそらくコイツもテンション上がってんだ。 「こんにちは。古河朋樹です」 「私、和泉。ねぇねぇ、同級生でしょ? タメ同士仲良くしよー!」 「うん、お願いします」  穏やかにほわほわ笑う朋樹。コイツの適応力すげぇな。大体のヤツは和泉のテンションとデリカシーのなさにひくんだけどな。 「朋樹の彼女、奏ちゃんなんでしょ? あ、私口は堅いから大丈夫よ」  もう呼び捨てだし。そういや、俺と初めてあった時も最初から呼び捨てだったな。  しかも口が堅いだなんて到底信じられないような言葉を放った。  乗り合わせたのが朋樹でよかった。この癖の強い女の対応を難なくこなしている。和泉も動じない朋樹にからかいがいがないと思ったのか、途中からは普通の会話しかしていなかった。  普通にしてりゃ、いいんだけどな。その普通の継続ができないのが和泉。と、保。どちらか片方だけでも厄介なのに両方揃ったら強烈だ。  嫌な予感しかしないまま守屋家に到着した。寛容に受け入れてくれた守屋家には感謝だ。普通の家ならこうはいかないだろ。  ……俺も色々麻痺して、普通の基準がわからなくなっている。
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