白い花が香る家

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 飯を食わせてもらって一息つく。俺らが飯食ってる間にも、詩は他の女性陣と楽しそうに会話をしていた。  普段仕事も忙しくて不定期だし、こうやって友達と遊びに行く機会も少ないんだろうな。  現に一緒に住むようになっても詩がどこかに出かけてくるって話を聞かないし。別に女友達と遊びに行くことくらい制限するつもりもない。  ただ、詩以上に時間のない俺のことを気遣っての行動なんだろうなとは思う。  詩が喜ぶなら、やっぱりたまにの集いくらい、付き合ってやるのも悪くはないか。そう思えば、保と和泉のハプニングも笑えるようになった。  女性陣が盛り上がっているものだから、自然と食後に出されたコーヒーをリビングで貰って、男ばっかの中に入る。  律さんの友達だっていう璃空さんだって、俺と2つしか変わらないとは思えないほど落ち着いている。雰囲気は律さんと似ていて、友達っつってもえらい違いだな、と保を見て思った。 「ねぇねぇ、昴さん。傷口診てよ」  ここぞとばかりに響が服を捲って腹部を見せた。先々月俺がオペしてやった傷。 「受診の時にしろよ。タダで診察なんかしねぇからな」 「なんで、なんで!? 姉ちゃんのは絶対するじゃん」 「するな」 「俺病人だよ!?」 「もう完治してるから。1ヶ月もすりゃそんなに痛くもないだろ。創部綺麗じゃねぇか」  たかだかアッペでなに言ってんだ。そもそも薬で散らせるレベルだぞ。お前がどうしても早く退院したいって言うからオペにしたんだろうが。  なぜかなつかれてしまった俺は、会う度に診察させられる。しかも、いつの間にかさっさと敬語もなくなって詩よりも遠慮がねぇ。 「なんか響、本当の兄弟みたいだね」  周が新しいコーヒーを持ってきて、立ったまま笑ってそう言った。響は中腰になって「そうでしょ!? 俺も早く本当の兄ちゃんになってよって言ったのに昴さん、全然結婚してくれないから」なんて言った。  またその話かよ。口を開けば「いつ姉ちゃんと結婚するんですか?」なんて言い始めたのは先月からか。  たまに一緒に飯を食ってもそればっかり。 「お前が兄ちゃん欲しいがために詩と結婚するのは違うだろ」  そう言えば、そこにいる全員がたしかに、と頷いた。 「俺だって兄ちゃん欲しいよ。あっくんばっかりずるいじゃん」 「ずるいってなに。散々律になついてたじゃん」 「俺も本当の弟みたいに思ってたけど?」  守屋兄弟が顔をしかめれば、「りっちゃんは兄ちゃんだけど、他の人に俺の兄ちゃんだよ! って紹介するとややこしくなるじゃん」と響。  そりゃ言い様だろうが。 「璃空さんは兄弟います?」 「兄貴と妹」  興味なさそうな璃空さんは、響の質問に淡々と答える。 「ほら、聞いた!? 兄ちゃんいるって!」  目を開いて周を見る。周はとてつもなく嫌そうな顔をして「まあ、いたらいたでいいけど、そこまでいいもんでもないと思うけど」なんて言う。 「誰のおかげでまどかさんと結婚できたんだっけ?」 「そ、それは! それはぁ、律のおかげだけど……」  急にしゅんっと小さくなった周を見て、確実な上下関係が見えた。
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