白い花が香る家

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「なんで奥さんとの結婚はりっちゃんのおかげなの?」  響の質問にどうせ律さんの紹介かなんかだろうと思ってた俺。  周は目を泳がせて口ごもる。そんな様子を易々と見逃すわけがない保。 「あれ? 周くん、面白い話隠してるでしょ?」  早速捕まって、言葉巧みに誘導される周。付き合いの長い俺でさえまんまと策略にはまるんだから周なんて簡単だろうな。 「武内くんって話聞き出すの上手いよね。精神科も向いてると思うんだけどな」  俺の耳元でこそっと言う朋樹。 「バカ言え。お前のとは違ぇよ。あれは自分の興味のある話しか聞かない人間だから。麻酔で眠ってる間に好き勝手オペしてる方が向いてんだよ」 「ああ、なるほど……」  納得した様子の朋樹に、結局概要を喋らされた周。偶然に見せかけた出会いが全て律さんの計らいだったこと、10年近くも片思いをしていたことを知った。  まさか周みたいなタイプが1人の女に10年間も夢中になってるなんて想像したこともなかった。女には困らないだろうに。  しかも相手は周のことなんて全く知らない状況だったっていうんだから、これが結婚でもしてなけりゃすげぇ気持ち悪い話だ。  むしろ弁護士の律さんがよく許したな。下手したらストーカーだぞ。 「えー! そんなの知らなかった!」  響でさえも興味津々で、保に限ってはおかしそうにゲラゲラ笑っている。保のターゲットが周に変わってよかったわ。  格好の餌食を見つけた保は生き生きとしている。 「ちょ……笑うところじゃないから。純愛でしょ? 結婚までこぎつけたんだから褒めてほしいくらいだよ」 「まあそうだね。頑張ったな」  肩を組んで称えられた周は満足そうに頷いていて、第三者の俺は必死に笑いを堪える。 「あっくんはなんでまどかさんと結婚したの?」 「ん? そんなの、独占したいからに決まってるじゃん」  なんの躊躇もなくそう言ってのけた周に、響以外はうわ……っと顔をひきつらせた。 「でも結婚って大変だって言うじゃん。他の女の子と遊べなくなるわけだし」 「響は可愛い子好きだもんね。そんなんだと彼女に振られるよ」 「えぇ!?」  ああ、そういや響のヤツ、うちの病棟の看護師にヘラヘラしてたって詩が言ってたな。猫被った女狐ばっかだけどな。響みたいにひっかかる男がいるから、ああいう女が減らないんだよな。  まあ、上手いこと需要と供給が成り立ってるわ。
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