白い花が香る家

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「そう、それね。年齢が上がれば上がるほど、不妊の悩みは大きくなるよね。うちは、子供欲しいけど、お互い医者を選んだし子供ができないなら無理に不妊治療はしなくていいかっていう話になったから、30まで待つことができたっていうのもあるよ」  知らなかった……。保のヤツ、結婚前にそんな話し合いまでしてたのか。ヘラヘラしてるようで、そういうところしっかりしてんだな……。 「不妊治療って大変だって聞きますもんね。夫婦仲悪くなったり」 「そうそう。俺もこの年になると、早く結婚した友達なんかはそれでもう離婚してたりするよ」  離婚!? さあっと血の気が引くのを感じた。俺の両親は死別だったし、仲が良い時に別れてるから離婚なんてことは考えたことがなかった。  保んち両親もすげぇ仲良いし……って、たしか詩っち両親は離婚してんだよな? そしたら余計、結婚に対して変な先入観あったりすんのか? 「えー、えー……そんなこと言われたら俺も結婚考えちゃうな……」 「響くん、結婚したくないの?」 「いや、いずれはって思ってますよ? でも、俺まだ社会人なりたてだし、金もないし今子供できても正直困ります」 「そりゃそうだ。反対に金があって、衣食住に困らなければいつ結婚してもいいか」  俺じゃねぇか。金はある。家もある。料理は詩が作ってくれる。買い物だって時には一緒に行くし。  結婚できない理由はない。いや、むしろいつだって結婚できる。そう、いつだって結婚できんだ。 「あー……でもそれで一生が決まるって思うと怖いなぁ」  響は膝を立てて、額をそこに置いた。 「怖いかな? その人との一生が自分のものになるって嬉しいことじゃない?」 「俺もそう思う!」  保の言葉に激しく同意している周。そりゃ独占したいからなんて言った男だもんな。普通、思っててもこんな公然の場で言わねぇぞ。 「だって、既婚者っていうだけでも変な男がうろちょろするのに、独身でいさせたら好き放題寄ってくるじゃん!」  好き放題!? 「俺、不安だったもんね。自分より経済力のある男がまどかさんに近付いて、言葉巧みにそそのかされたらどうしようって」  経済力……は、その辺の男には負けないはずだ。 「特にまどかさん、一人暮らしだったし仕事も不定期だったから時間合わないと、その間なにしてるかわかんないじゃん。まどかさんにその気がなくても、男の方がしつこくつきまとうかもしんないし」  それは……あり得るぞ。医局でも詩のこと可愛いって言ってるヤツいたし……。すれ違いの時間は周よりも多いし。  ずっと詩の行動を監視するわけにもいかないし、当然無理だし。  この先、異動なんかがあればその職場で他の医者と……なんてことはないよな……。いや、詩に限って絶対ない。男に興味のなかった女だし。  でも、男の方がしつこくってことはあんのか……。
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