白い花が香る家

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 いつの間にか、手に顎を乗せてうむ、と考え込んでいた俺にふと目を向けた保。 「てことだから、昴も結婚については真剣に考えなよ。後回しにしてると詩ちゃんの場合、浮気はないにしろ仕事に没頭することはあるだろうからね」 「……わかってるよ」 「じゃあ結婚すんの!?」  響はガッと俺の腕を掴んだ。デカイ声に驚いて慌てて詩の方に目をやる。未だに楽しそうに笑っている詩にほっと息をついて「デカイ声出すなよ。……詩がいいって言ったらな」と言った。 「本当!?」  ぱあっと表情を明るくさせる響。にたぁと不適な笑みを浮かべる保。ふっと穏やかに微笑む律さんとなぜかそわそわしている朋樹。それから全く無関心な璃空さん。  朋樹は俺以上に結婚のタイミングが難しいだろうし、璃空さんは自分がもう既婚者で妻は妊娠中だから他人の結婚なんて本当に他人事なんだろうな。 「なんてプロポーズすんの? ちゃんと真剣に考えなよね」  にやにやしている保に「じゃあ、参考にしたいからお前のプロポーズ教えろよ」と言った。 「……え?」  ひくっと顔をひきつらせる保。俺だってからかわれっぱなしは性に合わないんだ。 「いや、俺のはいいじゃん」 「よくねぇ。俺、プロポーズってよくわかんねぇわ。教えろ」 「ちょ、なになに。なんで今日だけそんなに積極的なの」 「俺も知りたいです! 保さんのプロポーズ!」  純粋に知りたがる響が身を乗り出して目を輝かせる。いいぞ、響。もっと聞いてやれ。 「いやいや、周はどうなのさ」  都合が悪くなるとすぐ他人に振る。 「えー? 俺? なんだっけかなぁ。普通に結婚しようじゃない? もう言い過ぎててどれがプロポーズかわかんないや」  え!? 衝撃の言葉に一同ぴくりと硬直する。言い過ぎてって、プロポーズなんてそんな何回もするもんじゃねぇだろ!? 「よっぽど結婚したかったんだね、あっくん……」 「そりゃそうだよ! それなのに奏も反対するし、あろうことか元カレまで出てくる始末でさ……ああ、本当に忌々しい」  すっと表情をなくした周。え、こわ……。コイツ、いつか人を殺すんじゃないかなんて目をしてる。  狂気的な愛情もここまでいくと歪んで見えんな。相手の嫁は相当寛容なんだな……そう思ってチラッとその嫁に視線を移した。
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