白い花が香る家

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 あんな変な女でもパソコンを操ることには長けているらしく、今日本でかなり人気のある女性向けゲームの製作者だそうだ。  それはいいとして、俺達を題材にゲームを作るだの言い出して、詩は興味を示してるし余計なことをするなと言いたい。 「お前、なんでそんなに嬉しそうなんだよ」 「え、そう? 嬉しそう? もしゲームができても私は昴を選ぶって言ったじゃん」 「だからゲーム関係ねぇだろ。……なに考えてる?」 「え!?」  ギクッと口角だけを上に上げて、目元はひくひくと痙攣している。やっぱりなんか、別のことを考えてたか。 「まさか、他の男に目移りとか」 「ないない。あのね……」  詩は俺の袖を引っ張ってその場に屈ませると、耳元で「璃空さんのことちょっと気になってて……古河先生との小説を書こうと思ってるんだけど」なんて言いやがった。 「ぜってぇやめとけよ」 「ほら、私イケメン好きじゃない」 「お前のは違うだろ。他のヤツのとは」 「昴と武内先生のヤツはもうすぐ完結だよ」 「報告いらねぇから。つーか、まだ書いてたのかよ。もう半年以上書いてんだろ」 「同棲の準備とかでちょっとペース落ちちゃって、書いてる暇が中々なくてね。同棲始まってからまたちょっと閲覧数伸びた」 「知らねぇよ」  忘れてた。コイツも十分変な女だったわ。人間、綺麗な表向きだけ見て生きていくことは困難だわな。  俺は、にやにやとうすら笑みを浮かべている詩を見て、やっぱりプロポーズはまだいいか……と軽く息をついた。 「昴、俺達病院戻るから送ってってよ」  保が和泉を連れてやってきた。俺もまだ仕事残ってるし、寄ってくか。  俺達は詩に断りを入れ、全員に挨拶してから守屋家を後にした。  保も和泉も満足そうだった。勝手についてきて文句言われても困るけどな。 「昴、詩ちゃんにプロポーズするらしいよ」  保がしれっと後部座席でそんなことを言う。 「は!? まだしねぇよ!」 「なになに、昴ついに結婚しちゃうか!」 「だからまだしねぇって!」 「恥ずかしがっちゃって! 詩ちゃん喜ぶと思うけどなぁ」  なぜか和泉は嬉しそうだ。自分だって新婚じゃねぇか。 「今度は新婚夫婦のお家に訪問しなきゃね」 「楽しみだわー。保なんて、仕事優先でもいいから結婚して側にいてって泣きついてきたんだから」 「ちょ、和泉!?」 「詩ちゃんは昴優先してくれるといいわね」  和泉はおかしそうに笑い、保は頭を抱えていた。  へぇ……この保がね。和泉に泣きついたのか。  人のプロポーズを笑い者にしようとするからバチが当たったんだ。思わぬプロポーズの真相を知り、俺は笑いが止まらなかった。
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