白い花が香る家

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 かなり驚いた顔の詩。でも、言った後に不安になる。詩が最初にコゲにいたってことは、少なくとも外科には興味があるわけだ。  今消化器にいて、今後も内科より外科にって思ってるなら……外科はダメだって言ったこと、嫌だったかな……。  変な医者は多いけど、アイツらだって医者だし……仕事は真面目にやってるだろうし。金子みたいに(はな)から公私混同してる男とは違うか……。  看護師としての可能性を奪うのって……違うよな。俺も医者だし……優秀な看護師が産休や育休で抜けていくのを見て、もったいないって思ったこともあったし。  俺は詩の結婚相手でもあるけど……それと同時に仕事の理解者でもなきゃなんねぇよな。  医療現場のあれこれなんて、他の男じゃ理解できないこともいっぱいあんだろうし……。 「ていうのはまあ、男としての俺の気持ちなわけで。医者の立場からしたら、もっと急性期について学びたいって思う気持ちは理解できるから……詩が外科で頑張りたいなら、我が儘言わずに意向を尊重する」  時には独占欲だって抑えなきゃなんねぇよな。周も璃空さんも保も皆嫁は30あたりで結婚してるわけだし……まだ25の詩にとっては早すぎる決断かもしんねぇよな。  そう思ってたところに、淡々と外科にきてから学べたことや看護師としてのやりがいを語り始めた詩。  相槌を打ちながら話を聞けば、やっぱり詩は看護師の仕事が好きなんじゃないかと思えた。 「看護師として昴のこと支えられないなら、家庭でいっぱい支えたいって思う。昴、私と結婚して下さい」  え……?  これは、紛れもないプロポーズ。俺がしようとしていたもののお手本みたいなやつ。  仕事を選びたいんだろうなって思っていたところに急に出てきた結婚の言葉。  それ、俺が言おうとしてたやつ……。詩の気持ちを尊重してなんて考えてたのに……。 「結婚するの? しないの?」 「……する」  なぜか俺の方が気迫負け。こんなに結婚に前向きだったなんて知らねぇし。あんな言い方されたらまだ仕事したいって思うじゃん。  辞めることも転職も渋ってたじゃん。 「明日、師長に昴と結婚するって言うよ?」 「いいよ。また……守屋家に挨拶しにいかなきゃだな……」  どんどん詩が話を進めるから、結局年内には入籍することと、直ぐにでも師長と退職について面談する運びとなった。  ……俺は……寝起きだったから頭がちゃんと働かなかっただけだ。決してビビってちゃんとプロポーズできなかったわけじゃないんだからな。
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