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「反動でしょ。だから誰にも反対されてないならさっさと結婚しちゃった方がいいって。結婚なんてタイミングなんだから、時期逃すとズルズルいくよ」
「だから今年中には籍入れようと思ってんだって。でも今年っつってもあと2ヶ月ねぇだろ? それでもわざわざ婚約指輪いるのかって聞いてんだよ」
「詩ちゃんならどうせ使わないしもったいないからいらないって言いそうだよね」
言いそう……。無駄遣いしないで金貯めろとか。なら、いらねぇのか。
「でもまあ、ちゃんと入籍するつもりでいるっていうケジメというか、覚悟の証明にはなるよね。俺の場合も延期になっちゃったけど、とりあえず指輪渡して婚約って形にしておいたから5年の空白があってもスムーズに結婚できたのもあるし」
「ケジメ、ね」
「まあ、昴次第じゃないの? 2ヶ月間の内に結婚するつもりなら入籍してから一緒に結婚指輪見に行けばいいし」
珍しくまともな保の意見を聞き、俺は悩んだ挙げ句、指輪を買いに行くことにした。その前に1件電話をする。
「きみから電話をかけてくるなんて珍しいね」
さらっとした声。俺だってまさかこの番号にかけることがあるなんて思ってなかった。仕事が終わったであろう19時頃を狙ってかけたからか、数回のコールですぐに出た。
「ちょっと聞きたいことがあるんすけど。律さん、詩の指輪のサイズ知ってます?」
「あのさ、俺がなんでも知ってると思ったら大間違いだよ」
「子供の頃から一緒にいるじゃないっすか」
この人なら知ってるって思うじゃん。なんでもお見通しみたいな目をしてんだから。
「それとこれとは関係ないでしょ。詩に直接聞けば?」
「……いや、あの……ちゃんとプロポーズしようかと思って……」
さすがにあのままってわけにはいかないだろ……。詩も俺が言うのを待ってただろうし。
律さんははた、と黙ってはーっと長い長いため息をついた。いや、そんなあからさまに嫌がらなくても。アンタにとっても大事な詩の結婚についてじゃん。
「ちょっと待って。折り返す」
それだけ言ってブツッと切られた電話。なんだよ……折り返すって。まさか、詩に聞く気か? いやいや、そんなの準備してますって言ってるような……
プルルルルーー
考え事をしている内に直ぐにかかってきた電話。
「はい」
「サイズが変わってなければ8号だって」
「……情報早いっすね」
「奏から。ただ、一昨年のサイズだからその時よりも太ってたら9号かもってさ」
なるほど、妹か。妹は詩と仲が良く、ファッションには詳しいもんな。
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