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詩の右手に乗せた箱を開ける。普段アクセサリー類をつけない詩がどんなものを好むのかはわからなかったが、俺なりに詩に似合いそうなものを選んだつもりだ。
キラリと光るダイヤが眩しい。それを指先でつまんで、キスをした左手の薬指にはめた。
よかった。ピッタリだ……。毎日走り回ってて全然太らないって言ってたから、指輪のサイズも変わんなかったんだな。
「これ……」
「うん。婚約指輪。年内には籍を入れたいと思ってる。だから、約束の証」
「綺麗……」
詩は少し手を広げて上に掲げた。目を瞬かせて、じっとそれを見つめる。
「口約束だけだと寂しいだろ」
「うん……でもこれ、凄く高いんじゃ……」
「気にすんな。俺が詩にあげたかったもんだから」
「昴……嬉しい」
もったいない。そう言われるかと思ったけど、詩は泣きながら笑った。嬉しいって言ってくれたその言葉が何よりも嬉しかった。
「俺も。詩と家族になれんの嬉しい。入籍いつにする? 俺としては詩の誕生日か大晦日でもいいかと思ってるんだけど」
「大晦日?」
「年が変わる前には籍入れたいじゃん。病院にもそう話してあるし」
「うん……でも、誕生日は誕生日で昴にお祝いしてほしいよ」
詩は真っ赤な目でふっと微笑む。
あー、そういや去年は結局祝ってやれなかったな。俺ばっかり元旦と誕生日と一緒に祝ってもらったってのに。
「そうだな。今年は盛大にやるか」
「うん。守屋家でね!」
お、おう……。結局守屋家……。切っても切れねぇな。誕生日くらい2人で祝わせてくれたっていいのに。そうは思うが、そこに結婚記念日なるものができるわけだからまあ、いいか……。
「付き合ったのが昴の誕生日だから、私の誕生日でもいいっちゃいいんだけどさ……別の日に2人で特別に過ごしたいから……私と昴の誕生日の間をとって21日はどう?」
おお……それはいいかもな。覚えやすいし。
「いいと思う。12月忙しくなるけどな」
「クリスマスもあるからね。子供ができたら毎日忙しいね」
詩がそう言って笑うから、何年後かにくるであろう子供がいるクリスマスを想像して期待に胸が膨らんだ。
「結婚式はどうする?」
「式は挙げたい……守屋家のおじさんとおばさんにもウエディングドレス姿見せてあげたいし」
「うん、それはもちろん。身内と仲の良い友達だけでいいんじゃないかと思ってんだけど。職場のヤツらがくるのは嫌だろ?」
「呼ぶ人いないよ、職場に……あ、同期がいたわ」
「お前、今存在忘れてただろ」
あんなに仲良しだって笑ってたのに。思い返せば、その同期との勉強会がきっかけで詩と2人きりで会うようになったんだよな。
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