旦那様はお医者様

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「旦那様にも見ていただきましょう」  カーテンが開けられ、昴の視線が刺さった。 「ダメだな。胸が強調され過ぎてる」  論外だ、とばかりに顔の前でさっさと手を振った。和泉さんに胸を触られたことを未だに気にしている昴は、胸が強調される服を好まない。  もちろん、昔からこれをコンプレックスに思っている私は、自らそんな服は選ばないようにしているのだけれど、ウエディングドレスはできるだけ綺麗に着たい。 「残念です……とてもよくお似合いなのに」 「ファッションショーじゃねぇんだ。俺との結婚式だぞ」  段々不機嫌になっていく昴に、言いたいことを察した勘のいいプランナーは「すこーしお待ち下さいね。胸を小さく見せるデザインもございますので」とうまい具合にかわした。  めんどくさい夫婦だと思われてんだろうな。そう思いながらも、私は色んなドレスを着る。 「それならさっきのヤツのがよかったな」 「さっきの、とは……」  用意されたドレス全部を試着して、昴がさっきのなんて言うから、些か苛立ちを横から感じ始める。 「5番目に着たのあったろ」  さすが驚異の記憶力。私もプランナーさんも全く覚えていない何番目をさらりと口に出す。  結局ほとんど昴の好みで決めたドレス。  でも……実は私もこれが1番可愛いと思ってたんだ。と自然と顔が綻んだ。  昴はというと、普段白衣やオペ着、パーカーなんぞしか見ないから、タキシード姿が眩しいったらない。  そもそもスタイルがよくて、ブライダルモデルさながらに整った顔をしている昴だから、当然似合う、似合う。  まるで雑誌の撮影かのような雰囲気の昴に惚れ直してしまったことは自分の胸だけに留めておく。
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