旦那様はお医者様

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 30にもなれば、常識がある人とない人の差が歴然となるものだ。 「いえいえ、お気になさらずに。私は昴さんの顔も好きですし、間違ったことは言われていませんから。ただ、医師としても尊敬していますし、そんなふうに大切な友人のことをバカにしたりもしない人間性に惚れただけですので。  医療のお勉強に力をお入れになって常識が追い付かないのは仕方のないことです。私には計り知れないほどの努力をして医師になったことでしょうから」  笑顔を絶やさず言えば、全ての人間が黙りこくった。  ふん、私は病棟全員から総スカンを食らって耐え抜いた女だぞ。お前ごときに負けてたまるか。  私は涼しい顔をして、幸せそうな武内先生と和泉さんに視線を移した。 「お前、おっかねぇ女だな……」  こそっと昴に耳打ちされ、「あんなの友達だなんて思わなくてよし。だから医者はいやなんだよ。ろくなヤツがいない」と隣の医者にぼやくのだった。  そんな経緯もあったから、余計に昴は本当に信用できる人間しか呼びたくなかったんだと思う。  ウエディングドレスに身を包む。私の本当の家族のように、控え室で待機してくれている守屋家。 「娘が嫁にいくみたいで寂しいよ」  なんておじさんが目を潤ませていた。 「ちゃんと祝福してやんなよ。奏の時もそう言って引き留めるつもり?」  りっちゃんが顔をしかめて言うものだから、わっとその場が沸いた。 「引き留めているつもりはないんだよ。ただ、やっぱり息子と娘だと思い入れが違うよ」 「おい」  さらりと言ったおじさんの言葉に、りっちゃんとあっくんは眉間にシワを寄せた。響も苦笑している。 「おじさんありがとうね。おばさんも。今までお世話になりました」 「そんなお別れみたいなこと言わないでよ。式前に泣かせてどうするつもりなの」  おばさんまで目を潤ませて私の背中をそっと撫でた。
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