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「ねぇ、本当に俺の時とはえらい違いじゃない?」
まどかさんに視線を向け、面白くなさそうに両親に指を向けるあっくん。確かに、あっくんとまどかさんの時にはおじさんもおばさんも泣いてなかったなぁ……なんて数年前を思い出し、クスリと笑ってしまった。
「女性は苗字も変わっちゃうからね。うちのお父さんだって珍しく泣いたくらいだから」
まどかさんもおかしそうに笑いながらそう言い、「律くんの時にはどっちかもう目に浮かぶようだね」と付け足した。
うん、りっちゃんの時にはあっくんと同じ反応だろうな。
私は、りっちゃんと隣の千愛希さんを見ながらそう思った。とても忙しい千愛希さんも駆けつけてくれ、今日はとてもいい日だ。
私がりっちゃんと喧嘩をして家を飛び出した時も、千愛希さんはちゃんと私の話を聞いてくれて、りっちゃんはそんな人じゃないよって教えてくれた。
私の方がりっちゃんとの付き合いが長いのに、よっぽどりっちゃんのことを理解している千愛希さん。
私達はお互い自由で自分勝手なの、なんて言ってたけど、ちゃんと結婚して夫婦になってくれる日が楽しみだな。
そんな思いもあって、千愛希さんは家族席に招待した。
次にお義父さんに会えば、こちらも目を潤ませて「本当に綺麗だね。娘ができるなんて夢のようだよ」と言った。
時々泣き顔を見せるのは、遺伝なのかな。なんてチラッと昴の顔を見てしまう。
昴はじとっと目を細めて「情けねぇから泣くなよ」なんて悪態をついている。
私の胸の中で散々泣いてた男が情けないなんて言うかね。
珍しく素直だった昴が可愛かったから誰にも言うつもりはないけど、お義父さんがこんなにも喜んでくれてるだからもうちょっと嬉しそうにしたらいいのに。
感無量。そんな言葉がピッタリのお義父さん。やっぱり暖かい人なんだと思う。
昴は完全にお義母さん似だけど、お義父さんだってけっこうなイケメンだ。こりゃ若い頃はモテただろうな……としみじみ思う。
それでも再婚もせずにずっと亡くなった奥さんを想っているのだから、その愛情もちゃんと昴に遺伝していますようにと願わずにはいられなかった。
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