旦那様はお医者様

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「おじさん、おばさん。今までずっと側で見守っていてくれてありがとうございました。高校生で母を亡くしたあの日から、大学を卒業するまでたくさんお世話になりました。  学校の手続きのことや家のことも心配していただき、無事に看護師になれたのも2人のおかげです。守屋家の皆さんには、本当の家族のように接していただき、嬉しいことも悲しいことも皆で共有できたように思います。  これから、昴さんと夫婦になります。私の理想の家族は、守屋家の皆のように仲良く明るい家族です。  今日という日を迎えられてとても幸せです」  とうとう涙がぽろぽろ溢れる。私の母が亡くなった経緯を知っている守屋家。おじさんとおばさんもハンカチで目元を押さえている。  あの勝ち気なかなでさえもぐずぐず泣いて、古河先生に背中を擦られていた。  俊輔さんと理沙子さんも、昴のことがあったからか2人寄り添い、テーブルの上に乗せた手を握り合って目を潤ませていた。  お義父さんに至ってはもはや号泣である。お義母さんが亡くなったことと、私のお母さんが亡くなったことが重なって見えているようだ。  涙、涙の披露宴。こんなにたくさんの人達が私のために泣いて喜んでくれるなんて、本当に幸せ。それもこれも、昴のおかげ。  そう思って少し背の高い昴を見上げれば、じわっと涙をいっぱい浮かべて私を見つめている。  ぽ、ポメちゃん……。  きゅーぅぅん。と胸を鷲掴みにされた。  昴もお母さん亡くして寂しかったもんね。一緒に幸せになろうね。  私が昴に寄り添うと、そっと私の頬を伝う涙を指先で拭ってくれた。自分も泣いちゃいそうなのに。やっぱり優しい……。 ーーバアアァァァン  幸せな、幸せな空間の中、突如大きく会場のドアが開かれた。それと同時に、見たことのない顔のプランナーさんと思われる人が息を切らせて入ってきた。 「だ、誰か! この中にお医者様はいらっしゃいませんか!?」
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