旦那様はお医者様

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 突然そんなことを言われてその場は一瞬固まる。しかし、すぐに数人がバッと立ち上がった。  おおおおおお医者様!?  隣の旦那様は険しい顔をして、身構える。  昴にお義父さんに俊輔さん。それから武内夫妻に古河先生。  います! お医者様、います! 6人も!  看護師も2人いまっせー! の状態で、女性は更に叫んだ。 「送迎バスにトラックが突っ込んで、横転したんです! 今救出してるんですが、怪我人が大勢いて!」  送迎バスってことは、来賓の方々が乗ってるんじゃないかと皆が血相を変えた。これはとんでもないことになった。  この会場にいる医師達はすぐに駆け出した。昴もタキシードの上着を脱ぎ捨てて、とんでもない早さでドアに向かって走る。  私もドレスの裾をたくし上げ、ヒールを鳴らして後に続いた。トラックが突っ込んで呼ばれるなんて、いつかもそんなことあったぞ!?  私と昴はことごとく邪魔される運命らしい。嘆いてもいられないこの状況。  自力でバスから出た人も何人かいるようだが、ガソリンが漏れだしているみたいで中にいる人達を必死に救出しようとしている人々。  これは本当に大惨事だ。横転し、下敷きになった人達の方が、重傷者が多いようだった。衝突したのは大型トラックで、大型対大型のとんでもない事故。  仰臥位で寝かせられた負傷者に駆け寄る。  次々に運び出された人々は、流血している者が多い。皆、スーツやフォーマルドレスを着ていることから、やはりこの式場の来賓者達と思われた。  こんなおめでたい日になんでこんな事故に……。  式はこれからなのか終わったのかは知らぬところだが、おめでたい空気が一変したことに変わりはない。 「高齢者の車が逆走してきて避けようとしたみたいよ。それでトラックにぶつかってそのまま電柱に突っ込んだんだって」  野次馬の如く集まった人達がそんな会話をしていた。
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