旦那様はお医者様

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 電柱に突っ込んだって、それじゃ運転手は!?  おそらく運転手が1番ダメージを受けているだろうとその姿を探す。  すぐに白い手袋をした人物を見つけ、その傍らに立つ。出血が酷い。  手首を掴んで橈骨動脈に触れる。かなり脈が弱い。呼吸も浅く、顔面蒼白している。 「すみません! 何かクッションになりそうなものをたくさん集めて下さい!」  近くのプランナーさん達にそう声をかける。左腕には金属のようなものが深く刺さっており、そこからおびただしい量の血液が流れていた。  私は近くの男性からネクタイを借り、傷の体幹側を縛る。 「先生! 出血量が多くて脈が弱いです! ショックを起こしてる可能性があります!」  私がそう叫べば、普段から先生と呼ばれている6人の先生方が一斉にこちらを向いた。そりゃそうだ。 「今止血を開始しています。ショック体位で様子をみます」  私が続けると、大きく頷く。 「こっちは呼吸が止まってる! 蘇生開始する。あ、ちょっときみAED持ってきて」  武内先生が冷静にそう言ってプランナーさんに声をかけた。 「は、はい!」  バタバタと現場は騒がしくなる。クッションになりそうな毛布やタオル等をたくさん持ってきてくれたところでそれを膝の下に入れ込んだ。  ショックとは、生体に対する侵襲あるいは侵襲に対する生体反応の結果、重要臓器の血流が維持できなくなり、細胞の代謝障害や臓器障害が起こり、生命の危機に至る急性の症候群と定義されている。  この中でも ・循環血液量減少性ショック ・心原性ショック ・血液分布異常性ショック ・心外閉塞・拘束性ショック  の4つに分類されており、この場合は循環血液量減少性ショックの中の出血性ショック。  血液が大量に外に出たことで血液量が足りず、臓器に血液が回っていないのだ。ショック体位といって、足を高く挙上させることで末梢にある血液を心臓に戻す役割を担う。
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