旦那様はお医者様

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「こんなに医者を集めちゃったから、仕事しろって言われてんのかなぁ」  俊輔さんまで肩を落とし、「やっぱり休暇を取るとろくなことがないな」とお義父さん。  いやいや、おめでたい日ー! 「武内先生達の時にはもっといっぱい、医者だらけだったじゃないですかぁ! 6人は少ない方ですよ!」  もう感覚すら狂い始めている。 「確かに、私も保も友達は皆医者だもんね。いやぁ、でも事故現場って慣れないから緊張するわー。詩ちゃん、機敏に動いてたねー」  肩をぽんっと和泉さんに叩かれ、顔を上げれば「さすが外科ナース」と歯を出して笑顔を見せられる。 「僕も血苦手ですー」  うぅーっと顔をしかめている古河先生。確かに心療内科の外来なんかは、入院措置が必要なほどの重症精神疾患を持つ人も少ないだろう……。それでも自殺企図に至る患者もいるだろうに。 「血が苦手ってなんだよ。お前、よくそんなんで医者やってんな」 「だから外科なんか専攻しなかったじゃん。無理、外科とか無理」  顔の前で手をふりふりしている古河先生に昴は顔をしかめる。そんなこと言いながら、古河先生は人が変わったみたいに適切に処置してたけどね。  ありゃ医者の本能だな、と私は何度か頷いた。 「確かに詩ちゃんしっかり動けてたね。ウェディングドレスで心マしてるのなんて詩ちゃんくらいのもんじゃない?」  俊輔さんはからからと笑っているが、笑い事じゃない。そうだよ、私新婦だよ!? これから結婚して幸せになります! って時に蘇生してる私ってなに……。 「ショックにいち早く気付いて対応してくれたのもよかったな。もう少し対応が遅れたら手遅れになったかもしれない」 「隷都病院じゃもったいないね」 「まったくだ。県立にくればいいのに」  お義父さんと俊輔さんにそんなことまで言われて飛び上がる。 「やめろよ。外科はもう卒業させんだから。余計なこと言うな」  私の肩を抱いて、口を尖らせる昴。そこに私達の笑いが溢れるが、守屋家の皆は壮絶な事故現場を後にして皆気分が悪そうだった。
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