旦那様はお医者様

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 式場まで戻ってくると、私達の担当プランナーさんが寄ってきて「皆様、お着替えを用意しておりますので、こちらへどうぞ」なんて声をかけられた。 「あの、すみません……こんなに汚れてしまって。買い取らせていただきますので」  ウェディングドレスを購入するということも考えたし、昴は一生の思い出だからそうしたらいいなんて言ってくれた。  でも、維持も大変そうだしきっともう着ることはないだろうからレンタルで写真に収められれば十分だと私が言ったのだった。  だけど、まさかこんなに酷い状態になるなんて思ってもみなかったし、他人の血液がついたドレスなんてもうレンタルには回せない。私の退職金と貯金で買い取らせてもらうしかない。そう思って頭を下げた。  けれどプランナーさんは大きく体の前で両手を振って「買い取りなんてとんでもないです! 救助を求めたのはこちらですし、あの方々は弊社のお客様です。  式の最中にも関わらず命を救っていただいたこと、適切な処置を行って下さったことに深く御礼申し上げます。社長の上杉からも感謝の言葉と、今回のお召し物のレンタル費用はサービスとさせていただく指示を受けておりますので、そのように準備させていただきます」と言った。  私と昴は顔を見合せ、医療従事者として当然のことをしたまでだが、社長さんがそう言うならと首を縦に振った。 「それと披露宴の方は、このまま続行させていただいてかまいませんか? それとも改めて日程を組みましょうか?」  改めて日程を組むのは……ちょっと。そりゃすごく楽しみだった披露宴だよ。ここまですごい念入りに準備して、全員の予定を合わすためにほとんど1年かけたんだもん。  改めてったって、激務多忙の外科医達が一度にそう何度も集まれるわけがないじゃないかと目を細める私。
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