旦那様はお医者様

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「改めてはやらないって顔してんじゃん」  昴は肩をすくめて笑う。ちゃんと顔に出てたらしい。 「だって準備大変だったし……まぁ、ハプニングになったけど……」 「いいんじゃねぇの? 医者と看護師の披露宴だし。誰も死ななかったんだ。逆に縁起いいのかもよ」  そんなことを言う昴。  それもそうかもしれない。この場にいた新郎新婦が私達じゃなかったら、親族に医師がいなかったら。あれだけの重傷者をいっぺんに診ることなんて不可能だった。  呼吸停止に至った人もいたのに蘇生できたのも、昴や武内先生の経験と適切な措置があったから。これが一般の新郎新婦で来賓者に1人も医者がいなければ確実に死者は出ていた。 「そうだね。事故に巻き込まれた人達には申し訳ないけど、外科医と外科ナースにとってはある意味箔が付く披露宴かも」  ふっと私が頬を緩めれば、その場の空気も和む。 「皆、気分悪くなっちゃったところ悪いんだけど、続けてもいいかなぁ?」  守屋家の皆に声をかければ「もちろん。詩の結婚式だもん。詩のしたいように」と微笑んでくれるりっちゃん。 「俺、平気。詩かっこよかったし。あ、昴も。あ、保も。あっと、朋樹」 「俺達はついでか」 「で、そのついで」  あっくんの言葉に、昴と武内先生も続くから私は思わずクスクスと笑ってしまった。あっくんはなんだかんだいって血液とか平気なんだよなぁ。案外医者も合ってたかもしれないなぁ……この人、理系だし。  あっくんを見上げて、未だになぜ税理士になったのかよくわからない私。税理士は数字だらけだけど、国試は完全暗記の文系なのにね。  そうは思うが、同級生4人組が仲良さそうに肩を組んだりしてるから、なんだかんだ悪くない披露宴だと私は頬を緩めた。
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