旦那様はお医者様

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 眼福映像にすっかり心は満たされて、私が大満足のまま披露宴は幕を閉じた。  友人らしい友人は同期くらいしか呼んでいないので、二次会をするわけでもなくそのまま解散予定だ。  着替えを済ませた私は、昴の横を通り過ぎ、まだ残っていた理沙子さんに近付いた。 「理沙子さん!」 「あ、詩ちゃん。綺麗だったわよー。おめでとう」  武内先生に似た美しい顔でニッコリ笑う。 「ありがとうございます! あの、理沙子さん……あの映像なんですけど」 「ん?」 「あれ、ちょっと録画させてもらえないですか?」 「あの映像? さっきの?」 「はい。武内先生と昴が一緒に映ってるやつが……」 「あぁ、なんだ。そんなのならいくらでもあるよ。子供の頃水遊びしたのなんかもあったし」  水遊び! そ、それはもももももちろん裸なわけですよね……。 「是非!」 「おい、お前なにしてる。帰るぞ」  ガッと腹部を腕でホールドされ、ズルズルと引きずられる。その主は当然昴なわけで、私の交渉の邪魔をする。 「あぁっ! 理沙子さん!」 「うるせぇ、諦めろ」 「いやぁぁ……麗しい2人がぁ……」 「俺との結婚式だぞ!?」  もう帰りますの状態の昴に抗えないまま、不思議そうに首を傾げている理沙子さんに手を伸ばす私。  仕方がない。後日自らまた交渉しにいこうと胸に決めた。 ーー  翌日、千聖から電話で起こされ寝ぼけたまま、口を開いた。  今日は式の後だからと休み希望を取ったのだ。昴はいつも通り回診に行っちゃったけど。 「んぁ? どうしたのー?」 「詩! 新聞見た!?」 「新聞? うち、新聞なんてとってないよ」 「ちょっ、昨日の事故のヤツ新聞の一面に載ってる!」 「はぇ?」  まだぼやぼやしながら慌てる千聖の言葉が理解できずにいる。そりゃあれだけ大きな事故だから、新聞くらい載るだろうと騒ぐ理由がわからない。
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