20年前の約束

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「待って!」 振り向くと同じ会社の久保田くんだった。 20歳年下の彼。 気になっていた彼。 「えっ?何?」 「美菜、俺だよ?分かる?」 「えっ?」 「生まれ変わって美菜に会いに来たんだ。」 …生まれ変わり? 「…まさか…」 「ずっとずっと探しててやっと見つけた。それで、美菜の近くに居たんだ。」 「…まさか…トオル?」 何が起きているのか分からずに立ちすくんでいた。 え?トオルなワケがない。だって20年も前に死んでしまったでしょう? 「うん、トオルの生まれ変わりだよ。」 と握った手は懐かしい感触の…あの温かい…トオルの手。 「そのロッカー開けてみて。」 鍵をひねり、扉をギーッと開けると… 中には小さなリングケースが入っていた。 「こ、これっ…」 「俺が死んでしまったあの日、次の日に会いに来る美菜に渡そうと思ってそこに入れて置いたんだ。」 彼はそのケースをロッカーから取り出し、私の前で開けた。中身はキラキラ輝いているダイヤの指輪。 もう、訳が分からなくて…涙の雫が溢れ出て止まらない。 「20年前の約束を果たしに来た。俺と結婚して欲しい。」 「…急に現れてそんな事…」 「あっ、ダメ?姿が違うし、久保田のままだし…。」 「違う…たぶん久保田くんのままでもきっと…好きになってた。」 「じゃあ、結婚前提に付き合って下さい。」 「…だったらいいよ。」 私たちはロッカーの前で強く抱き締め合った。20年ぶりのぬくもり。 生まれ変わって会いに来てくれた? そんなドラマみたいな話…ある? もしかしたらこの街ならあるのかもしれない。 この東京という街なら…。 「ねぇ、久保田くん。私だいぶおばさんになったけど大丈夫?」 「うん、美菜がおばさんになっても好きなもんは好き。」 「私も久保田くんが好き。」 久しぶりのキスはやっぱり変わらない感触だった。 大好きだった唇。 私はまた、その唇とあなたに恋をする。 end
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