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秘めた想いの為に
俺には優しい姉がいる。彼女は弟から見ても美しく、且つ聡明で、そして隙がない。故に半端な男では交際を申し込む前に自ら身を引いてしまう程だ。
幼い頃両親が事故で亡くなってから俺達は、施設で育ってきた。正直親の事は覚えていない。俺にとって姉は親代わりであり、唯一の肉親であった。
そんな姉とは大人になった今でも毎週のように、決まって水曜日の夜に食事をする。何故水曜日なのか、仕事や学校の都合が良いわけではないが俺が16歳の頃から習慣になっていた。
里親が見つかり姉弟離れ離れになった事もあったが、数年振りに再会してからはこうして家族の時間を過ごしている。決して順調な人生では無かったが、姉がいればそれだけで良かった。
「姉貴、次はどうするんだ?」
「決まってるじゃない、誘うのよ」
「まだ早くないか?」
「この間の事、あなたも見てたでしょう?問題ないわ」
「俺は物陰からこっそり見てただけだからなあ、ま、姉貴が言うなら大丈夫か」
「じゃあ前に頼んでおいたアレ、よろしくね」
「ホント無茶言うよな」
「あら、出来ないの?」
「問題ない、準備しておく」
姉には変わった趣味があった。少々やっかいな趣味なのでしばしば手伝ってやる必要があるが、全て俺が担当した。頼られる事が嬉しかったからだ。
家族としても、そして男としても姉の事を支えてやりたい。
たとえそれが、人を殺す事だったとしても。
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