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サミールとタマラ
その二日後、兄貴のサミールから電話があった。
聞けば奥さんのタマラとの間に子供ができたようだ。
両親の死後間もない時期。
暗い気分を吹き飛ばしてくれる明るい話題だ。
兄貴は鉄道会社の社員。大きな貨物列車の運転手。
奥さんとは会社で知り合っている。
奥さんのタマラは私の幼なじみ。
小学校から大学まで同じで、姉のような妹のような存在だ。
“同じ女として、同じ黒人として、アンタが誇りだよ!”
“我が家から正義の味方の誕生だ”
SWATの試験に合格した時、涙を流して喜んでくれたかけがえのない大親友。
オーバーな褒め言葉で自分の事のように喜んでいた兄貴。
ロングビーチで強く抱きしめ合った。
あの燃えるように熱い夕陽にも負けない、2人の体温を今でも忘れない。
「これはきっと父さんと母さんからの贈物だね」
「ああ、その通りだ。これから産婦人科までタマラを迎えに行く」
その電話が最期の会話だった。
夕方のパトロールをしている私に警察署の仲間が連絡してきた。
サミールとタマラの乗っていた車が事故を起こした、と。
乗り物の運転が大好きで、一度も車にキズを付けたことのない兄貴が事故なんて。
こんな事って…。
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