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「……少しは落ち着いた?」
花柄のハンカチでずっと私の涙を拭ってくれていた香津美さんからそう聞かれて、私は小さく頷きました。今この場所に香津美さんがいてくれるだけで、不安に押しつぶされそうだった心も少し落ち着いたような気がします。
「月菜さんが泣いているのは、柚瑠木さんが原因なんでしょうけれど……彼もうちに来た時、少し様子がおかしくてね。」
「柚瑠木さんが……?」
香津美さんはその時の柚瑠木さんの様子を詳しく話してくれました。
普段は冷静沈着で冷たい表情の柚瑠木さん。そんな彼が少し焦り眉間に深いしわを寄せた厳しい表情で、幼馴染の聖壱さんに会いに来たんだそうです。
「聖壱と二人きりで話がしたいんです、ってね。すぐに月菜さんの事だろうと思ったのよ、柚瑠木さんにあんな表情をさせることが出来るのは貴女だけのはずだから。」
あんな表情とは……?今まで私の事で柚瑠木さんがいつもと違う表情を他の人に見せたことがあるのでしょうか?
でもきっと柚瑠木さんは、そんな私を……
「……私が柚瑠木さんを困らせてしまっているようなんです。私が強くなると困るって、彼から言われてしまって。」
柚瑠木さんのあの言葉にどんな意味があるのでしょうか?弱い妻のままではこれ以上、貴方に近付くことも出来ないのに……
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