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そう……本当に時々ですが柚瑠木さんは私に不器用な優しさを見せてくれるんです。それに私も少しずつですが、彼の表情の変化が分かるようになってきたんです。
ほんのちょっとずつだけれど、私たちの関係も前に進んでいると思ってもいいのではないでしょうか?
「……私は香津美さんと聖壱さんが本当の夫婦になったと聞いてとても羨ましかったんです。」
あの事件の後、2人の関係が変わったのだと柚瑠木さんに聞いて、少しショックだったんです。私達の関係には変化はなかったのに、と。
それでも、あの夜から私達も何かが変わった気がして……
「ですから……もう少し頑張ってみたいと思うんです。私が柚瑠木さんに出来る事はそれしかありませんから。」
頬の涙をゴシゴシと拭って、私はもう一度香津美さんを見上げました。私の気持ちは変わらないのだと、彼女にもはっきりと示しておきたかったから。
「ふふふ、その調子でいいんじゃないかしら?あんな逃げ腰の夫なんて気合いでガシッと捕まえちゃって、月菜さんのその覚悟を見せてあげるといいんだわ。」
「それは、いくらなんでも強すぎませんか?柚瑠木さんに強い私は困ると言われてますし……」
香津美さんの言う通り、確かに私の気持ちは分かって欲しいけれど……あまり強引な行動で、柚瑠木さんに嫌われたくも無いですし。
「どうせ柚瑠木さんも自分の気持ちを抑えられなくなりそうで困っているんでしょうよ。少しくらいは強引な方が彼にはいいでしょう。」
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