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「聖壱さんからのメッセージ、香津美さんに見せて貰いました。柚瑠木さんが心配して焦っていると……」
私の事を突き放したのは柚瑠木さんの方なのに、なぜ心配なんてするんです。どうして貴方はそんな顔で私の所に帰ってくるのですか?
柚瑠木さんがそんな事をするから……私は貴方に何度も期待してしまうのに。
「香津美さんから、月菜さんが泣いているとメッセージを貰ったんです。だから、僕は……」
私の頬に残る涙の痕に、そっと触れる柚瑠木さんの指先。酷い言葉で拒絶して泣かせたのは貴方なのに、こんな風に優しくするなんて……本当に柚瑠木さんは狡い。
彼の事を狡いと思っているのに、私の心はどうしようもないほどに柚瑠木さんを求めています。
「放っておけばいいんです、ただの契約の妻なら。でも柚瑠木さんがそうやって不器用な優しさをみせるのなら、私は……!」
柚瑠木さんを諦められない、どうしても貴方にもっと近づきたいと思ってしまいます。
私はもっと柚瑠木さんを受け入れたいし、柚瑠木さんには私の事を受け入れて欲しい。そう望んでしまう心を抑えきれなくなってしまうんです。
「柚瑠木さんとの関係をこれ以上望めないのなら、優しくなんて――――」
しないでください、そう言おうと思ったのに。柚瑠木さんは私の手首を掴んで……
「……では、諦めないでくれませんか?」
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