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「……え?」
信じられなくて、私は一瞬だけ自分の耳を疑いました。
だけど……かろうじて聞こえるくらいの声でしたが、確かに柚瑠木さんは私に「諦めないで」と言ってくれたんです。
「本当に、諦めなくてもいいんですか?柚瑠木さんは、私が強くなると困るのに?」
諦めたくない、だけど柚瑠木さんを困らせたくもない。でも……柚瑠木さんの事を諦めずに頑張れば頑張るほど、私は強くなってしまうのだと思います。
それに私は……
「柚瑠木さんがそれでもいいと言うのなら覚悟してください。私は柚瑠木さんが思っているよりもずっと諦めが悪いんです。」
私の手首を掴む柚瑠木さんの腕をグイっと引っ張って、彼の顔を自分へと近づけます。しっかりとお互いの目を合わせて、それでも柚瑠木さんが瞳を逸らさないでいてくれるのなら……
「僕も覚悟を決めてきました、僕を受け入れてくれようとしている月菜さんを信じる努力をします。だからお願いします、貴女だけは僕の事を……絶対に諦めないで。」
「……絶対に諦めてあげません、私しつこいんですからっ!」
思い切って手を伸ばせば、柚瑠木さんは私に応えるように優しく抱きしめてくれました。私よりずっと背の高い柚瑠木さんの背に手を回して、そっと温かな彼の胸に顔を埋めました。
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