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柚瑠木さんが何を怖がっているのか、私はまだ何も知りません。ですが彼にどんな理由があったとしても、私のこの気持ちが変わることは無いと思うんです。
「分かってはいたんです、月菜さんはきっとありのままの僕を受け入れようとしてくれてるんだと。けれど僕はとても臆病で、自分を守るために貴女を拒絶してしまった。」
柚瑠木さんに私の想いは伝わっていたようで、少しホッとしました。それに彼は、自分の思っている事をこうして私に伝えてくれようとしているんです。
「本当にすみませんでした。あの時、月菜さんをあんな風に傷つけてしまった僕を許して欲しい。貴女が妻でなければ良かったなんて……本当は思っていませんから。」
そう言うと、柚瑠木さんは私を抱きしめる腕に力を込めました。誠意を込めて謝ってくれる柚瑠木さんを、責めることなんて私に出来るはずないのに。
ほら、数時間前までもう駄目かもしれないと涙を流していたのが嘘のように心が温かいんです。
「柚瑠木さんがこうして戻って来て、傍にいてくれればいいんです。それだけで……こんなに私は幸せなんですから。」
香津美さんが聞いたら「もっと怒りなさい!」と言われてしまいそうですが、本当に今はこれだけでいいんです。この柚瑠木さんの温もりがあれば……また明日からも頑張れる気がします。
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